旅行や出張などで海外に行くと、その土地ならではの料理を味わえるのが楽しみの一つです。料理の味付けに使う調味料や香辛料が違えば、当然味が変わってきますが、国によってはそれを作る土壌の違いからか、食材自体の味が違う場合もあるようです。
今回は来日したフランス人女性が、日本の食材で母国と違う! と感じた食べ物についてインタビューしました。(コメントは回答者の個人的な意見です)
スーパーで買えるかぼちゃの種類が少ない!
世界三大料理の一つにも数えられるフランス料理。そのバリエーションは豊富で、ラタトゥイユやブイヤベース、キッシュなど日本で馴染み深い料理も伝統的なフランス料理の一例です。豊富な食材の中でもまずは、さまざまな料理に使われる野菜についての違いを聞いてみました。
「Citrouille (スィトルイユ)はかぼちゃのことだけど、日本のかぼちゃのように緑ではなくて、ハロウィンの時によく見るオレンジ色のものよ。フランスではオレンジのほうが一般的ね。スープにしたり、パイにしたりするわ。あとは野菜の種類がとても多いの。玉ねぎだけでも、いろんなサイズのエシャロットや白玉ねぎ、紫玉ねぎがあるわ」
オレンジ色のかぼちゃ「Citrouille(スィトルイユ)」は日本ではハロウィンの時期の飾りでしかほとんど見かけませんが、フランスでは料理用としても一般的なようです。
フランスで一般的に使われるかぼちゃはこの他にも3種類ほどあり、それぞれ料理によって使い分けられています。ズッキーニのように細長い形をした「Courge(クルジュ)」はスープなどに用いられ、平たい形で大型の「Potiron(ポティロン)」は甘みを活かした料理に、いろいろな色がある「Potimarron(ポティマロン)」はケーキなどにも使用されるようです。
一方で日本のかぼちゃの食料自給率は60%ほどで、北海道や鹿児島、茨城県などで生産されたものが主に流通しています。日本で多く生産されているかぼちゃは大きく西洋かぼちゃと日本かぼちゃの2つに分けられます。目にする機会の多い黒皮栗かぼちゃは西洋かぼちゃの一種ですが、フランスで一般的な4種類のかぼちゃとは見た目も味もかなり異なるようです。
実は日本でも生産されているかぼちゃの種類は豊富ですが、いろいろな種類のかぼちゃをスーパーマーケットで目にする機会は多くありません。日本ではあまり意識されていないかぼちゃやたまねぎの味や見た目の違いも、フランスでは名前や用途の違いがしっかり浸透しているようです。
日本の牛乳は冷蔵ものばかり。常温がない
チーズやバターなど乳製品を使う料理も多いフランスですが、日本の乳製品についてはどう感じているのでしょうか?
「日本の牛乳は冷蔵で売られているけど、フランスでは常温のものもあるの。ストックしておいて必要になったら冷蔵庫に入れるのよ。フランスの牛乳は脂肪分によって蓋の色が違うから分かりやすい。例えば赤色は脂肪分高め、青色は低脂肪とかね。味は日本のものより濃いかもしれない。やっぱりチーズやバターはフランスのものが美味しいと感じるわ」
フランスでは高温や超高温殺菌された常温でも保存できる牛乳の方が主流のようです。また、インタビューにもあったように、蓋やラベルの色で脂肪分が分かれていて選べるようになっています。脂肪分が濃い順に黄色→赤色→青色→緑色という色の違いがあるようです。
脂肪分の濃さによっては味の濃淡の違いもありますし、常温保存できる牛乳は高温処理のために風味が失われてしまいます。フランスでは牛乳の常温保存が一般的であることを考えると、やはり日本の牛乳とは味が異なるように感じられるようです。
バターやチーズはフランス料理で用いられることも多く、なじみ深い味はやはり美味しく感じられるのかもしれませんね。
日本は薄切り肉がたくさん売っている!
牛肉や羊肉、鶏肉などフランス料理にはお肉も欠かせません。味や種類の違いはあるのでしょうか?
「フランスのお肉は日本の方より脂身が少ないかも。胃もたれせずにたくさん食べられちゃう。日本のお肉は脂身が多くて柔らかいのが多いよね。お肉は肉屋やスーパーで買うけど、種類も牛、豚、鶏、鴨、羊、ウサギなどたくさんあるわ」
日本ではあまり一般的ではありませんが、やはりフランスでは牛・豚・鶏に加えて、羊やカモ、ウサギのお肉も一般的に食されているようです。
また、フランスではマルシェと呼ばれる市場でお肉を買うことも多いようです。マルシェでは欲しい分だけ注文してその場で切り分けてもらうことがほとんどのため、日本のスーパーマーケットとは販売方法も異なります。
「フランスでは薄切り肉は見かけないわね。最初は慣れなかったけど、薄切り肉は火が通りやすくて便利ね。野菜と炒めたりするわ」
短い時間で料理をするために、薄切りのお肉はフランス人にとっても便利なようです。日本人にとっては当たり前に感じますが、あらためて考えると食材の売り方にも各国違いがあることに気付かされますね。
日本で食べる魚はとても美味しい!
日本は海に囲まれた島国ですが、フランスも地中海や大西洋、北海にも面しており、海産物には恵まれた国です。食材としての違いはあるのでしょうか?また、おいしさに違いはあるのでしょうか?
「フランスでも寿司は人気なので、食べたことはあったけど、日本で食べる寿司はとてもおいしいわね。スーパーにいろんな種類の魚が売っているのもすごいわね。でも焼き魚は骨があるし、苦いから苦手」
魚に関しては、やはり日本の魚の種類や鮮度は、舌の肥えたフランス人も驚かされるようです。フランスでは魚もマルシェで購入することが多く、その場合は冷蔵・冷凍設備があまり整っていないこともあるため、生食にはまだまだ抵抗があるようです。
フランスをはじめ、世界各地で寿司の人気はとても高いものですが、やはり日本で食べる寿司が一番おいしいと外国人も感じるようです。また、価格の面でも海外では一般的に寿司は高級料理ですが、日本に来るとスーパーマーケットでも手軽に安価で購入でき、寿司を身近に味わえるという違いもあります。
キノコ類やトマトも、フランスに比べて買える種類が少ない
来日した外国人にとっては日本の食材の味の違いだけでなく、そもそも売っていない食べ物も多いようです。どんな違いがあるのでしょうか?
「いろいろあるけど、フランスは野菜の種類がやっぱり多い。キノコやトマトも何種類も売っているのよ。あとは、ポテトチップスはポテト以外にも豆から作ったチップスもあったわよ」
フランスとの野菜の違いは、かぼちゃや玉ねぎなども挙がりましたが、やはりその他の野菜でも種類の豊富さには違いがあるようです。特に名前が挙がったキノコやトマトはフランス料理ではいろいろな料理に使用されるため、風味や見た目、味の濃淡によって使い分けがされています。
日本でも味わえる食材がどんどん増えている!
フランスと日本の食材の違いについてインタビューを元に考えてきました。まだまだ一般的には購入するのが難しい場合はありますが、調べてみるとフランスで売っている種類のかぼちゃの中には、日本でもインターネットで購入できるものもあるようです。
訪日外国人が増加している日本。日本独自のおいしい食べ物を味わってもらうのも良いですが、旅行途中に母国料理も食べられるような選択肢が広がると日本への旅行ももっと楽しくなるかもしれません。
<筆者プロフィール>
塚原 和久(つかはら かずひさ)
「旅行、社会インフラなど身近なものから、企業人事など硬めのジャンルまで幅広く担当するライター。苔、観賞魚など自然をこよなく愛し、妻との旅行を楽しむ日々。」
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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