今、テレビを観ていると「世界」「日本」「ジャパン」という言葉が入ったタイトルのバラエティーが多いですよね。
訪日中の外国人にインタビューしたり、日本大好きの外国人を取材したり、海外で暮らす日本人に密着したり……いずれも、日本や日本人を、外国人の視点というフィルターを使って浮き彫りにする演出が特徴です。
これらの番組、視聴率も良い傾向にあるようで、ここ数年に渡ってテレビ業界のブームと言えるでしょう。
ちなみに、2017年の訪日外国人は前年比で約20%増の2869万だそうです。確かに東京の街を歩いていると、外国人の多さに改めて驚く時がありますが、もはやそれが日常の景色でもあります。外国人を登場させる番組が安定的に人気なのも、なんとなくうなずけますね。この流れは、2020年の東京五輪・パラリンピックまでは余裕で続きそうな気もします。
そこで今回は、「なぜ外国人から見た日本を紹介する番組が高視聴率なのか?」を、実際にそんな番組を担当している放送作家に聞いてみました。
そこには、なるほど!の理由があったのです。
理由1:「日本に生まれてきてよかった!」と再確認できる
昨今、外国人が登場する番組の多くは、「日本の素晴らしさ」を伝えているものが多い。ところが十数年前だと、テレビに登場する外国人は「なぜ日本人はこうなのか?」「日本のココがおかしい!」といったネガティブな指摘をすることが多かったと記憶します。この変化は大きいようで――。
「じつは、外国人の番組が人気なのは、おじいさんおばあさんなど上の世代なんです。この世代の人たちは、人生経験も豊富。いろいろあった中で、改めて“日本に生まれてきてよかった”と再確認したい。そんな心理は働いていると思われます」
かつて自虐的な性格だった日本人ですが、最近は海外へのコンプレックスが薄らいでいるのかもしれませんね。日本を誇らしく思う人が増えているようです。
理由2:続く“日本再発見”ブーム――まだまだネタが尽きない
外国人から見た日本を紹介する番組のコンセプトは、どれもが簡単に言えば、“日本の魅力再発見”です。当事者では気づかない良いトコロを「それ、いいじゃん!」と教えてもらって、見直している。
明治時代の美術研究者・フェノロサが“日本美”を発見し、日本人自身による日本再評価につながってきたことと似ています。
「このネタが尽きないのが、人気が続いている理由かもしれません。日本ってグルメのレベルが高いですから、グルメネタが枯渇することがほぼない。そもそも、歴史と伝統があるので、観光に向いた資源も多い。紹介できるネタが豊富だと言えますね」
元々のネタ数が多いということらしい。コンセプトが同じでも、多くの番組が共存共栄しているのがうなずけます。
理由3:外国のことも知れる!それぞれのお国柄が見て取れるから
「視聴者は、テレビに出てくる外国人が日本の魅力を語っていたとしても、そこからその外国人のお国柄を読み取っています。それが透けて見えるのも、面白さでしょうね」
以前にこんなことがあったそうです。日本のレストランの店頭で見かける食品サンプルが、レベルが高すぎてアートだ!と欧米人に人気なのは知られたところ。最近は、その人気がアジア系を中心に各国へ広がっているとか。
そこで、観光客が食品サンプルの制作体験ができる店を取材したところ、出身国によってなにを作るのか、違いが傾向で出たと言います。
欧米人には寿司が人気。オーストラリア人はフルーツ。アジア系は、たこ焼きやかわいいスイーツにも挑戦する傾向があるとか。これも、お国柄ですかね!?
理由4:視聴者の多くは日本人なので“自分ごと”として共感できる
「当然と言えば当然なんですが、外国人から見た日本を語ると、視聴者の多くは日本人なので“自分ごと”として見てくれます。多くの人は褒められれば誇らしいし、日本の意外なものに興味があると伝えれば、そうなのかぁ~と驚いてくれる。『外国人と日本人』という括りは視聴者を集めやすいとテーマなんだと思います」
テレビのように視聴者が数百万人単位以上のメディアは、どうしても大きな括りで、誰もが当てはまるテーマを選ぶのがポイントになるそうです。『男と女』『独身者と既婚者』……そして、『外国人と日本人』。視聴率を稼ぎたいテレビ制作者たちにとって、外国人はありがたい存在なのかもしれません。
理由5:現代の多様性が見られる!
テレビでしばしば登場する“日本人以上に日本通”の外国人たち。どういうきっかけなのか、落語・禅・琵琶・三味線・墨絵・陶器……などにやたら詳しい。この多様性がまさに「今」なのだという――。
「アニメやゲームが海を渡るのは、もはや当たり前。一方、伝統モノがウケるのも理解できます。今や、日本のお弁当が海外で人気ですが、これなど戦略的な売り出しというより、ごく自然に広まった感じがして面白いですね」
日本のお弁当は見た目もアートで、ヘルシー。そこが人気だとか。
良いものは良い。面白そうなものは取り入れる。世界は確実に混ざっていますね。
多様な価値をテレビが伝えているところも、視聴者は支持しているのでしょう。
いかがでしたか?
外国人が登場する番組が高視聴率なワケ。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、この傾向はまだまだ加速していくと思われます。
他者との出会いは、自分との出会いでもあります。まだ見ぬ日本に出会えそうで楽しみですね。
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。好きな食べ物は、和食。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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