日本の調味料は、海外で非常に高い評価を受けています。近年では外国のスーパーに醤油が並んでいる風景も、珍しいものではなくなりました。また、マヨネーズのように外国から入ってきた調味料であっても、日本製であるという理由で人気を博しているものもあるとか。
じつは海外の文化と日本独自の発想が融合して誕生した日本の調味料は多数あり、今や世界中の食卓に並ぶ人気の調味料も。今回は、そんな「海外ルーツだけど日本で生まれた調味料」から5つピックアップ!
「ウスターソース」はイギリスの本家を真似た失敗作!?
やきそば、ハンバーグ、目玉焼き、お好み焼きなどなど。子どもも大好きな、日本でお馴染みの食べ物にぴったりのソースといえば、さらりとした粘度の低い「ウスターソース」! ウスターソースは、イギリス発祥でその中でも元祖である「リーペリンブランドのウスターソース」が人気を博し、独占的に販売されていました。
日本への輸入が開始となったのは明治33年。さっそくリーペリンを手本にして日本でもウスターソース製造を開始したのですが、レシピが秘蔵となっており、材料がまったくわからない……。なんとなくの憶測から野菜・果物・砂糖・酢・塩・香辛料各種で作り上げたのが、現在の日本発のウスターソースなのです。
イギリスのウスターソースとの大きな違いは、アンチョビが入っているか否か。結果的に、まったく味の違うソースが出来上がってしまったのですが、クセが強いせいか料理の隠し味やアクセントとして使われることが多いそう。対して日本のウスターソースは、料理自体の味を決めるメインのソースとして、好評を博しています。
「焼肉のたれ」は韓国でも大人気商品に!
焼肉のルーツと言われている朝鮮では、食べる前日から肉をタレに漬けこんでいるため、最初から味がついています。しかし、日本人はしゃぶしゃぶやすき焼きを始め、肉には何かを付けて食べるのが好きな人種。
そこに目をつけ、日本の食文化に合わせたつけダレを考案したのが「焼き肉のたれ」の発祥と言われています。本格的に日本で市販されたのは、昭和40年のこと。上北農産加工農業協同組合が発売した「スタミナ源たれ」が元祖とされています。
その後、エバラ食品が「エバラ焼肉のたれ」を発売。これによって焼肉は、家庭でも専門店さながらの味を楽しめるようになり、一気に日本国内に普及したそうです。この焼肉のたれは本場であるはずの韓国にも渡り、大人気となっているようです。まさに逆輸入調味料の代表格と言えるのではないでしょうか。
オランダ由来の「ポン酢」はもともとアルコールだった!
これは意外な事実かもしれませんが、「ポン酢」の「ポン」はオランダ語の「pons(ポンス)」からきています。ponsは、英語のpunch(ポンチ)から生まれた言葉で、お酒に果汁やソーダや砂糖を加えたアルコール飲料、一種のカクテルのことを言います。当時のオランダ人は夏の暑さを防ぐために、このponsを飲んでいたようです。
江戸時代にponsは日本に伝わりましたが、日本ではアルコール飲料としては馴染まず、柑橘系の果汁だけを「ポンズ」と呼ぶように。その結果ポンズは橙果汁(ダイダイカジュウ)、つまりアルコールと砂糖の入らない調味料という意味に変化していったのだそうです。
狭義のポン酢は、柑橘類の果汁に酢酸を加えて味を調えたものです。しかし現在ではポン酢に醤油を混ぜた「ポン酢醤油」も、ポン酢と呼ばれています。今や醤油と並んで、日本の国民的調味料となったポン酢。焼酎などでポン酢割という飲み方も存在するそうですが、元がアルコール飲料だったことを思うと因果を感じますね。
「和風ドレッシング」で日本の食卓にドレッシングが定着!
「和風ドレッシング」は、醤油をベースとしたサラダドレッシングのこと。ひとくちに和風ドレッシングといっても、その材料は極めて多様。アオノリ・シソ・すりおろしたショウガ・梅干し・ワサビ・ゴマ・ユズ……これらを加えたものはすべて和風ドレッシングと見做されているようです。
もともとドレッシングは、酢と油のみで作られたものは紀元前から作られていました。日本で初めて販売されたサラダドレッシングは、昭和33年にキユーピーが発売したフレンチドレッシングです。この時点では日本での認知度は低く、売り上げは伸び悩んだそう。
しかし昭和40年、これまたキユーピーが国内で初めて和風ドレッシングを発売。続いて昭和53年中華ドレッシングが発売され、これを機に醤油味のドレッシングの認知度が急上昇。瞬く間に国内に広まったそうです。もし、和風ドレッシングが作られていなかったら、今でも日本の食卓にドレッシングは存在していなかったのかも……?!
「みりん」は中国生まれの説もあり!
料理のコクやうま味を引き出す調味料「みりん」が誕生したのは戦国時代。 日本に古くからある練酒、白酒などの「甘いお酒」の腐敗防止のために、 アルコールを加えていたのが改良されてみりんになったという説がポピュラーですが、実は中国から渡来した蜜がしたたるような甘い酒「密淋(ミイリン)」が起源という説も濃厚です。
江戸時代前期では、甘いお酒として、女性や下戸の人が愛飲していたそうです。後期になると、鰻のたれやそばつゆに使われだし、調味料としても活用されるようになりました。明治から戦前にかけては、みりんは贅沢品とされ、高級日本料理店などで使用されていました。その後、昭和30年代に入るとみりんが大幅減税され、一般家庭にも普及したとのこと。
ちなみに、アルコールを糖化熟成させるという古くからの製法で作られたものが「本みりん」。これはアルコール分も約14%とかなり高めです。比較的安価で売られているみりん風調味料や、料理酒と呼ばれる商品は本みりんと製法や成分が違うばかりか、調理の際の効果もまったく違いますので注意しましょう
いかがでしたか?海外ルーツながら、日本で独自の発達を遂げて現代の食卓へ並んだ調味料たちの軌跡。その誕生は、料理界の発展にも大きく作用したと言われています。これらの調味料たちが、世界の食卓に当たり前のように置かれる様を今後も見守っていきたいですね。
1979年生まれの熟女ライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像技術者・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーとして活動を始める。好きな食べ物はプリン体を含む食べもの全般。卵の黄身だけは世の中で唯一食べられない。
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