皆さん、麺はお好きですか?日本は本来は米文化の国ですが、うどんに蕎麦、そうめんなど古来から麺料理を食す文化も持ち合わせています。
中華麺やイタリア発祥のパスタなど、海外と融合した麺文化も日本の国民食としてしっかり根付いていますよね。これは、麺料理が日本人からとても愛されている証だと思います。
となると……とうぜん海外から入ってきた後に日本で新たに発祥した麺料理もたくさん存在するわけです! 今回は、日本で新たに生み出された海外ルーツの麺料理について紹介します!
「ソース焼きそば」は日本独自の大胆なアレンジ!?
中華麺を使った日本独自の麺料理といえば、「ソース焼きそば」ではないでしょうか。中華麺が中国から日本に普及したのが大正末期。そして、ソース焼きそばの原型である中華料理の「炒麺(チャオミェン)」もその頃に日本に伝わっていたようです。
しかし、ここにウスターソースを絡めるアイデアがいつ生まれたのか? これについて詳しいことはわかっていません。一般的には第二次世界大戦直後の闇市で発祥した説が有効ですが、浅草付近ではすでに、戦前、お好み焼き店で提供されていたという説もあります。ただ、浅草のお好み焼き店で出されていた焼きそばがウスターソース味であったか否かがはっきりしないため、真実は残念ながら闇の中です。
とはいえ、中国4000年の歴史を誇る炒麺(チャオミェン)を、ウスターソースで味付るなんて、他国でも類を見ない大胆な調理法。さらに、このソースについても日本各地で多種多様なアレンジが加わったご当地焼きそばが生まれている辺りも、ソース焼きそばは日本の文化に深く根づいたと言えますね。
「冷やし中華」は仙台の中華料理店が生んだアイデア麺料理
ソース焼きそばに続き、日本人が誇る日本発祥の中華麺料理の代表格をもうひとつ。ずばり、夏の風物詩「冷やし中華」です!これは、発祥の時期や土地もはっきりしています。
生まれたのは昭和12年。仙台にある「龍亭」という中華料理店の創業者・四倉義雄が開発したと、創業者が残した資料に記録されています。当時は「涼拌麺(リャンバンメン)」という名で売り出されており、夏の暑さを吹き飛ばすために作られた料理でした。
当時の中華料理店は、現代とは違い冷房などありません。油っこく熱いというイメージの中華料理は、夏場はお客さんから敬遠されがちで、その売り上げの落ち込みはとても厳しく深刻なものだったとか。
そこで、暑い中でも食べてもらえる麺料理の試作に着手。夏バテ防止のために野菜をふんだんに使い、食欲増進のために酸味を加え、試行錯誤の末に完成しました。つまり、冷やし中華は日本の気候が生み出した夏を乗り切るアイデア料理というわけです。
今では夏場には日本全国の中華料理店で見られる「冷やし中華始めました」の文字。もはや新しい季語と言っても過言ではないほど、日本の夏に馴染んだ一品でしょう。
中国の留学生のために作られた「ちゃんぽん」は栄養満点!
長崎で生まれたご当地麺料理も、元を辿れば中国料理です。ちゃんぽんという表現自体は江戸時代にはすでに存在していたようです。「異なるものを混ぜること」の意味を持つ言葉で、沖縄料理のチャンプルーも同一語源という説があります。
さて、麺料理のちゃんぽんの発祥についてですが、これは明治時代中期に長崎市に現存する中華料理店「四海樓」の初代店主である陳平順が、中国から来た留学生に、安くて栄養価の高い食事を食べてもらいたいと思い、福建省の「爛麺」(メンミエン)という料理からヒントを得て考案したといわれています。
ちゃんぽんの大きな特徴は「唐あく」と呼ばれる長崎独特のかん水で製麺した太い麺を使うこと。そして十数種類の具材が入った豚骨と鶏がらのスープで煮立てること。
ちゃんぽんの味は、中国人留学生のみならず長崎はおろか九州全土の人たちを魅了しました。その後の九州各地のご当地麺料理にも、強い影響を与えたといいます。実は九州名物の濃厚な豚骨ラーメンも、長崎のちゃんぽんが元になっているという説があるくらいです。
「皿うどん」は出前時の工夫から誕生した!?
「四海樓」の陳平順が、中華料理を元に考案した麺料理がもうひとつあります。それは「皿うどん」。麺と細切り肉を炒めた焼きそばである「炒肉絲麺(チャニイシイメン)」をベースに、ちゃんぽんを出前する際、汁をこぼさないようアレンジしたのが発祥です。見た目が皿に盛った焼きうどんのようだったことから皿うどんの名がつきました。
その後、かた焼きそばが中国から新たに伝わった時に、パリパリに調理した細麺を使うタイプの皿うどんも誕生。現在ではどちらかというと、後者のパリパリ細麺の方が一般的に知られているようで、長崎市周辺の店でオーダーした場合、何も言わなければパリパリで出てくることが多いとか。
ただし佐世保市周辺では、太麺が主流のよう。長崎観光に行って注文する場合はお店にどちらの麺なのか、事前に確認しておいた方が無難ですね。
試行錯誤の上に完成した「盛岡冷麺」は、いまや岩手県の名産に!
岩手県盛岡市の名物麺料理「盛岡冷麺」。1954年に盛岡で「食道園」を開業した青木輝人が、自分が子供のころ育った北朝鮮で食べていた冷麺を独力で再現したのが始まりです。
小麦粉、片栗粉などを用いた生地に強い力を加え、麺の太さに合わせた穴から押し出して作られる麺。辛さを自由に変えられるキムチのトッピング。
牛骨ダシ中心の濃厚なスープ。これらの「故郷の味の3要素」がブレることなく、日本人の好みに合わせてさまざまな試行錯誤が繰り返した結果、盛岡冷麺の基本形が完成したそうです。
ちなみにメニュー名は当時は平壌冷麺。1986年に盛岡で開催された日本めんサミットへの参加で、盛岡製麺は全国的にも盛岡の名物として知られるように。盛岡冷麺の名称は、サミット開催の翌年にオープンした「ぴょんぴょん舎」が名づけたことから広まりました。
そして2000年、盛岡冷麺の生麺は、讃岐うどんや札幌ラーメン、沖縄そばなどと同様に「特産」「名産」表示が認められました。紆余曲折の末、盛岡冷麺は名実ともに日本発祥の麺料理となったのです。
いかがでしたか?海外から日本にやってきた麺料理は、いつの間にか日本で独自に開発されて発展し、今では日本の四季やご当地を代表する料理に名を連ねるようにまでなりました。
これからも、日本発祥の麺料理の数々が愛され続けますように!
1979年生まれの熟女ライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像技術者・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーとして活動を始める。好きな食べ物はプリン体を含む食べもの全般。卵の黄身だけは世の中で唯一食べられない。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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