親日的と言われ、日本人と心理的距離が近いと感じられる人が多い国・台湾。歴史的にもつながりがあり、コロナ前は年に475万人も訪日する年もあり、その数は韓国と中国に次ぐ第3位です。また、中長期在留者も6万人弱だそう。
そんな台湾人なのですが、日本に住んでみるとやはり慣れないことがあるのでしょうか?「日本人は冷たい!」「食べ物の選択肢が少ない!」そんな愚痴もたまに耳にしますが、本当のところどうなんでしょうか?
ということで今回は、在日台湾人の筆者が、在留期間3か月を超えた台湾人を対象に、「日本でなかなか慣れないことって何?」と、その本音を聞いてみました!
(以下はインタビューに応じてくださった方の個人的な意見です)
日本のお店は早く閉店する?
「日本の京都と台湾の新竹との比較なんだけど、新竹のデパートは夜10時までのところが多い。でも京都駅近くのデパートは夜8時で閉まっちゃう。台湾にいた頃は仕事終わりに食事して8時くらいになっても、その後まだデパートに行ける。京都だとそういうわけにはいかない。河原町だって、8時半になると店は大体閉まっちゃう」(31歳・男性・会社員)
筆者も台湾出身ですが、これは確かによく台湾人の友達に言われます。新宿でも台湾と比べれば確かに閉店が早いデパートが多いようです。もちろん深夜まで営業する飲食店やカラオケなんかもたくさんありますが、夜遅くまでデパートをうろうろすることに慣れた台湾人にとっては、少し物足りないのもあるかもしれません。
カラオケに食べ放題がない?
「台湾のカラオケって、大抵ビュッフェ式の食べ放題とソフドリンク飲み放題がついていて、歌を歌うついでに昼食や夕食も解決。日本だとそういうのがない。食べ物はあるけど、頼むと別料金だし……」(22歳・女性・学生)
確かに台湾のカラオケと日本のカラオケって結構システムが違います。台湾のカラオケは部屋単位で室料を取るところが多いが、日本のカラオケは人数でお金を取るところが多いです。
台湾のカラオケは「みんなで楽しむ」ことが前提で、日本のカラオケは気軽にヒトカラもできます。だから台湾のカラオケはビュッフェがついているのかもしれませんね。
日本は夜食の選択肢が少ない?
「夜遅くまで勉強していてお腹が空くと、台湾では外に出ればいろんな屋台があって、気軽に夜食が買える。鹹酥雞(台湾風唐揚げ)に豆花(豆腐のようなゼリー状デザート)に豆乳、選択肢はたくさんあるのよ。日本だとコンビニくらいかな。あと台湾のコンビニでは茶葉蛋(茶葉や醤油、香辛料で煮込んだゆで卵)とホットドッグがあるけど、日本ではそれがないのがちょっと寂しいな」(25歳・女性・学生)
やはり夜市文化で有名な台湾、夜食の選択肢も豊富で、屋台も充実。日本も深夜や24時間営業のお店ももちろんありますが、在日台湾人の多くは、台湾の軽食が恋しくしかたがないと聞きます。「茶葉蛋」のにおいは慣れない日本人にとっては異臭のように感じられるかもしれないですが、慣れた台湾人にとっては懐かしい香りなんです。
日本では仕事と育児の両立が難しい?
「私にはまだ子供がいないけど、周りの子持ちママはみんな大変。保育園に落ちたら仕事を辞めて育児に専念せざるを得ない人が多いし、その後に職場復帰も難しくなる。保育園に受かっても夕方4時か5時にはだいたい迎えに行かなければならない。台湾だともっとフレキシブルなベビーシッターサービスがあるし、育児からの職場復帰率も高いのよ。そのためか、日本より女性管理職比率が高いように思うわ」(30代・女性・会社員)
業界によって差はあるでしょうが、厚生労働省によれば管理職の女性比率の平均は、14.3%。一方で台湾は27.8%で、しかも現在の大統領も女性。女性の社会進出度は進んでいるとも言えるのではないでしょうか。充実した育児支援も、その一因のように思います。
日本の賃貸物件は空っぽが多い?
「台湾で部屋を借りると、家具がついてくるのがほとんどだよ。洗濯機、冷蔵庫、テレビ、ベッド、椅子、机、クローゼットなど、全部ついてくる。日本だと借りた部屋は空っぽで、家具は全部自分で揃えないといけないし、お金もかかるし、引っ越しも大変」(31歳・男性・会社員)
それは確かに大きな違いですね。なぜそういうことになったのか筆者も分かりませんが、日本で引っ越ししようとすると、家具や家電を揃えないといけないから初期費用は侮れません。
台湾だとスーツケース1つで引っ越すことも可能ですから、モノに縛られない身軽さがあります。一方、日本では理想の部屋のレイアウトに合わせて自分で家具などを選べるから、それもまた楽しいです。良し悪し、というところでしょうか。
ゴミ捨ての曜日と種別が決まっていて、忘れると大変?
「日本のゴミ捨てって、曜日ごとに収集種別が決まってて、忘れたら下手すると2週間待たないといけないじゃない?しかも私の住んでいる所では、朝8時までに出さないといけない。台湾だとゴミ収集車が毎日来てくれる」(30代・女性・会社員)
台湾に住んでいると、ゴミ収集車の「トゥルルトゥルルルン~♪」という、クラシックの「乙女の祈り」や「エリーゼのために」の音楽が、もはやこれ以上ないほど馴染み深い音。台湾では毎日黄色のゴミ収集車が1~2回来てくれるんですが、収集車が通ると住民は家庭ごみを持って家を飛び出し、収集車に捨てなければなりません。ゴミ収集車が来る時間帯はエリアによって決まっていますが、もちろんズレもあります。捨て損ねたら翌日まで待たないといけません。日本ではあまり馴染みのないシステムですね。
台湾人ですがすっかり日本に慣れた筆者としては、ゴミ収集車を待ったり追いかけたりするなどとても考えられず、日本のシステムの方が自分のペースでゴミが出せていいとは思いますが、そこはやはり人によって意見が違うようです……。
車は歩行者を優先する?
「台湾では歩行者が道を渡る時に、曲がろうとする車はあまり優先させてくれないから、歩行者が譲らなければならないんだけど、それに慣れちゃって日本でも反射的に車に譲ろうとしてしまう。でも向こうもこっちに譲ってくれようとするから、結局どっちも動かず、道で止まってしまう」(19歳・男性・学生)
それって、日本の運転手の方がマナーがいいってことなのでは?(笑)逆に日本に慣れた人が台湾に行くと気をつけないといけないようですね……。
いかがでしょうか?インタビューの結果、日本に住んでいる台湾人は、すっかり日本に慣れたという人もいれば、なかなか慣れないという人もいました。そこは国というより、もはや個人差が多いように感じました。心理的距離が近いと思う日本人が多い台湾でも、生活の細かいところではこんな違いもあるんだ、ということに気付いてくれたら嬉しいです。
参考:
※ 訪日外客数・出国日本人数データ - 日本政府観光局(JNTO)
※ 在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表 - 法務省
※ 報道発表資料「平成29年版 働く女性の実情」を公表します - 厚生労働省
※ 106年人力資源調查統計 - 行政院主計總處
※ 本記事は2019年初掲出のものを再編集して公開しています
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