
日本の最も印象的なシンボルひとつである富士山は、近隣の山梨県と共有する、静岡県の誇りである。東京から新幹線ですぐの静岡県は、週末の旅行先として人気があり、海風に吹かれ名産の緑茶を飲めば、リフレッシュして元気になれる。
今回は、そんな静岡の景勝地を自転車でめぐる体験をリポート。仏教寺院での貴重な宿泊など見どころが満載だ。
静岡市観光自転車ネットワーク協議会: レンタサイクル1回500円

自転車で冒険へ出発。静岡市観光自転車ネットワーク協議会では、e-bikeを1回500円でレンタルしている。利用時間はレンタルする場所によって異なるが、限られた利用時間の中でも電子アシスト自転車のおかげで、わずかな労力で長距離を走ることができる。
日本を創った徳川家康お気に入りの清見寺 で、美しい風景を眺める

出発して30分ほどで、最初の目的地である7世紀に創設 された「清見寺(せいけんじ)」に到着。かつては「全国十刹(じっさつ) 」の一つに数えられるほど重要な寺だったこともあるが、現在は静かで落ち着いた佇まいを見せる。歴史愛好家には人気の寺だ。

いまから500年ほど前、この地域は今川氏によって治められていた。1603年から1867年まで日本を支配した徳川幕府の創始者であり初代将軍である徳川家康が幼少の頃、今川氏の人質となり、清見寺の住職のもとで教育を受けた。そのため、家康は生涯を通じてこの寺を愛したという。

清見寺には、鐘楼や山門 、絵画、書など、数多くの重要な文化財が残されている。また、寺の庭園は国の名勝に指定されており 、庭園内にある臥龍梅は家康が接ぎ木したものといわれている 。

清見寺は静岡市を見おろす高台にあり、眺めがよいことでも知られる。現在は静岡市内のビル群が立ち並ぶ風景を見ることができるが、かつては豊かな緑と穏やかな海岸線、そして遠くに山々が連なる絶景だったという。豊かな自然に包まれていた500年前の眺めを想像しながら、眺望を楽しもう。
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清見寺
- 住所 〒424-0206 静岡県静岡市清水区興津清見寺町418-1
- 電話 054-369-0028
明治時代の首相の別荘、 興津坐漁荘記念館 へ

清見寺から自転車で10分ほどのところに、かつての首相の別荘跡地である「興津坐漁荘記念館」がある。別荘を所有していたのは1906~1908年と1911年~1912年に首相を務めた西園寺公望で、当時のままの姿に復元された別荘が公開されている。

興津坐漁荘は、日本の伝統的な建築様式である京風数寄屋造り。木材をはじめ、全てが天然素材で造られているのが特徴で、住宅ではなく茶室として使われるのが一般的だったという。

興津坐漁荘は海辺の別荘として建てられた。ここがお気に入りだった西園寺公望は、晩年ここに居を移し、90歳で息を引き取るまで住み続けたという。オリジナルの建物は愛知県犬山市にある「博物館明治村 」に移築され、後にこの建物が復元された。
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興津坐漁荘記念館
- 住所 〒424-0206 静岡県静岡市清水区興津清見寺町115
- 電話 054-369-2221
おかかえ茶園かねぶん で、富士山の絶景と緑茶を味わう

1時間以内に次の目的地、山間にある「おかかえ茶園かねぶん」に到着。ここでは茶葉を栽培しており、喫茶室ではお茶を味わうことができる。茶畑越しに見る富士山は迫力満点で、条件がよければ早朝に雲海が見えることもあるそうだ。

毎年春に、茶葉の収穫シーズンを迎える。ここでは丁寧に手摘みしており、その後の加工も全てが手作業だ。お茶の味は、淹れ方によって大きく変わるのが興味深い。

併設された喫茶室でお茶の淹れ方を学ぶ。高温のお湯で淹れると苦味が凝縮された味わいに、低温だとマイルドで複雑な味わいになるなど、お湯の温度によって緑茶の味が変化することを体感できる。

静岡の山間で育てられた緑茶は、まさに絶品。緑茶教室では緑茶味のスイーツを味わえるほか、レッスンの最後には茶葉を食べる体験もできる。
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おかかえ茶園かねぶん
- 住所 〒424-0111 静岡県静岡市清水区吉原979
- 電話 054-368-1913
宿泊は庵原山 一乗寺 で。楽しく学び、くつろぎのひとときを

曹洞宗の寺「庵原山 一乗寺」は約600年前に創設された。本堂は改修されており、美しい状態を保っている。現在は寺の一部を宿坊にする計画が進んでいるという。

一乗寺では参拝客だけでなく、地域の人がさまざまに利用できる環境づくりに取り組んでいる。信仰する宗教などによる制限はなく、誰でも利用可能だ。

本堂の一角には「一乗寺ブックスペース」があり、フリードリンクを楽しめる。また、自由に絵を描けるお絵かきコーナーは、絵画好きの僧侶の熱意から生まれたものだ。本堂の至る所でアニメのフィギュアやコミック調で描かれた住職の姿を見ることでき、住職の明るい性格やおもてなしの精神を感じることができる。

宿泊する本堂の部屋は、畳に布団といったシンプルな設え。床から天井まである窓からは、美しい禅庭を眺めることができる。
精進料理とどろき による、極上のベジタリアン料理を味わう

夕食と朝食で提供されるのは「精進料理とどろき」による精進料理。僧侶でもある料理長は、幅広い料理の経験と人体に関する知識を駆使して、五感で楽しめる精進料理を提供している。

精進料理とは、仏教の教えに従って調理されたものだ。基本的には「五味、五感、五色、五法」という伝統的な日本料理の決まりに沿って作られている。

精進料理は基本的にはベジタリアン料理で、多くはヴィーガン料理でもある。魚や肉などは使われておらず、野菜や豆腐など植物性の材料のみが使われている。

精進料理とどろきは、ふだんは静岡市内にある「全福寺 」で食事を提供している。独自のスタイルの料理を生み出す料理長は、精進料理の料理人たちから敬意を集めているという。

料理に使われるのは、収穫されたばかりの旬の食材。料理の味付けやコースの構成は考え抜かれており、ここでしか楽しめない深い味わいだ。
座禅や己書で己と向き合う。 夜にはプロジェクションマッピングも

一乗寺では、楽しく学べるさまざまなアクティビティを用意している。最新のアクティビティは、夜に開催されるプロジェクションマッピングショー。アニメーションのキツネが境内を駆け巡り、なんともかわいらしい。

言い伝えによると、その昔、お供え物を盗んだり大騒ぎしたりする、いたずらなキツネがいた。僧侶を悩ませたキツネは住職によってついに捕まり、懲らしめられたという。キツネは怪我もなく解放されたが、それ以来二度といたずらをすることはなくなったそうだ。プロジェクションマッピングのキツネは、この伝説のキツネをモチーフにしたものだ。

翌朝には、座禅を体験。座禅とは仏教における重要な修行の一つで、正しい姿勢のまま動くことなく座り続けるというもの。考え事や心配事を追い出し、頭の中を無にすることで、禅の境地に到達することができる。

座禅会の後は、「己書(おのれしょ)」を体験した。己書とは自由な発想で書をしたためるもので、文字を描きながら瞑想のような体験ができるというもの。お手本を参考に描くため、日本語の読み書きができなくても大丈夫。感性の赴くままに描けるのが大きな魅力だ。
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庵原山一乗寺
- 住所 〒424-0114 静岡県静岡市清水区庵原町1937
- 電話 054-366-0182
ホテル クエスト清水 で、身体が喜ぶ駿河湾のフルコースランチ

ランチは自転車で約40分のところにある「ホテル クエスト清水」へ。地元の食材を使った身体にやさしいフルコース料理のレストランで名高い。料理はカロリーや糖質、塩分は控えめながら、それを感じさせない深い味わいが魅力だ。

コースで提供されるのは、駿河湾の恵みが詰まった多彩な味わいの料理の数々。地元で採れた野菜や魚、肉のほか、駿河湾の名物・サクラエビも料理を彩る。
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ホテル クエスト清水
- 住所 〒424-0816 静岡県静岡市清水区真砂町3-27
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最寄駅
054-366-7101
松林越しに富士山を仰ぎ見る。風光明媚な三保松原 へ

旅の締めくくりに訪れたのは「三保松原」。この松林は日本三大松原として名勝に指定されており、近くには御穂神社 がある。


三保松原は富士山の眺望スポットとしても名高い。濃緑の松林と青い海の輝きが、背景の富士山を壮麗に彩る。
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三保松原
- 住所 〒424-0901 静岡県静岡市清水区三保1338−45
- 電話 054-340-2100
日本の歴史を垣間見ることができた静岡県の自転車旅

今回の旅を通じて、静岡県には見過ごされがちな興味深い歴史があり、日本の魅力が詰まったすばらしい場所であることを感じることができた。観光客で混み合う人気観光地を訪れる王道の旅もいいが、静かに穴場を楽しむ旅はいかがだろうか。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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