今もなお国土の約7割が森林で、世界有数の森林国である日本。日本では、どのように森林を守ってきたのでしょうか。群馬県森林組合連合会を取材し、日本の林業で推進される「森林資源の循環利用」の現状を紹介します。
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日本が木と歩んできた歴史
豊かな森林に囲まれた日本では、昔から、身近な木を材料に建築物や身の回りの物をつくってきました。
釘を使わずに木材を組み上げる木造建築技術。木目などの素材を活かす数寄屋づくり。木を削って、漆を塗り、何重もの手間をかけてつくりあげる漆器。古くからの木工技術を土台に発展させてきた木製家具づくり……。
木造建築に住み、日本各地に伝統的な木工製品の技術が根付いている日本。
500年代頃には大型の木造建築の技術が発展し、その後も寺や神社、城の建設など、建築用の木材需要が増加していきました。1600年代になると、都市部の近隣の山々が荒廃し始めたことを受けて、森林の伐採を禁じる伐採制限や、森林保全のための植林が次第に行われるようになりました。また、増加する木材需要を支えるために、林業を目的とした造林が1600年代から始まったと言われています。
森林を伐採していても森林割合が変わらない理由
日本の森林面積は国土の約7割を占めており、50年以上前から、ほぼ同じ数値をキープしています。この日本の森林資源(蓄積)は約54億m3で、その約6割を人が苗木を植えて育てた「人工林」が占めています。また、森林資源の蓄積量は人工林を中心に、毎年約6千万m3程度増加しています。森林(人工林)をバランスのとれた状態にするためには、苗木を植えて、育てて、収穫して利用し、再び苗木を植えるというサイクルを回していく、森林資源の循環利用が重要です。
それによって、健全な森林の育成とともに住みやすい環境と資源を持続的に得ることができます。
人工林のサイクルはおよそ40~60年。長い道のりに感じますが、その間にも丁寧な植林保護を行っています。苗木を植えた後、5~6年は苗木の成長を妨げる雑草や灌木を刈り払う「下刈り」を、15年くらい経つと造林木の成長を妨げる樹木を伐り払う「除伐」を行います。20~25年が経つと、育てようとする樹木同士の競争を軽減するため、一部の樹木を伐採する間伐を行います。さらに30~35年目には2回目の間伐を行い、40~60年経つ頃には立派な人工林が造成されます。
間伐を行うのは「木の成長を促すとともに国土保全の目的もあります」と話すのは、群馬県森林組合連合会の高橋伸幸さん。
「毎年のように日本では夏になると台風や大雨の被害が各地で発生し、それに伴う土砂災害も起きています。人工林の間伐をすることで、土壌に光を入れて木の下に生える雑草を繁茂することで、土砂流出リスクを減らしています。」
日本の林業に携わる人は、環境保全のためにも木の配置をバランスよく考えています。
日本のスマート林業が叶える、林業の未来
広大な森林を管理するために、日本では「スマート林業」を積極的に取り入れています。スマート林業とは、地理空間情報やICT、ロボット等の先端技術を活用して、森林施業の効率化や省力化を図る取り組みのこと。
その代表例が、森林で活躍するドローン。ドローンは様々な現場で活躍しており、そのひとつが森林を計測する作業です。これまでは技術者が現場を歩いて測量していたところを、ドローン導入によって、上空から写真解析をして面積を測れるようになりました。また、苗木や鹿柵などの運搬にも用いられています。
また、ドローンと同じく、測量のスマート林業で注目されているのがレーザースキャナーです。「これまで木の測定は、人が木を一本一本測ったり、形質を見たりと、人海戦術で行われていましたが、急斜面などでは怪我をするリスクが高まります。しかし、地上レーザーを照射してそのエリアの木の性質を全て把握できるようになりました」と、高橋さん。他にも木材需要マッチングを行うシステムの導入など、木材が無駄なく活用できる仕組みも進められています。
SDGsに貢献する、日本の森林資源の循環利用
1960年以降に植えた人工林は、今まさに利用期を迎えています。森林資源の循環利用は日本各地で進められており、群馬県ではちょうど苗木が植えられたばかりで、若い苗木がすくすくと成長していました。また、近年は鹿による植栽木の食害も問題となっており、この獣害対策も森林組合の重要な仕事になっています。
森林資源を循環利用する持続可能な森林経営は、SDGsに貢献できる取組として注目されており、17のゴールのうち15「森の豊かさも守ろう」に貢献します。
伐採した木のゆくえ。木材利用が地球温暖化に貢献する理由
「森林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に貢献している」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
地球温暖化は温室効果ガスの濃度上昇が原因と言われており、大気中への二酸化炭素の放出を減らすこと、また、大気中の二酸化炭素を吸収することが防止策です。
地球温暖化防止に貢献しているのが、大気中の二酸化炭素を有機物として固定する働きを持つ植物。特に、成長過程の樹木は、光合成により二酸化炭素を吸収して大きくなり、木材の中に二酸化炭素がどんどん蓄積されます。
この木材を、製品として住宅や家具等に利用すれば、二酸化炭素が大気中に放出されずに長期間にわたって木材の中に貯蔵されます。また、伐った後に再び苗木を植えることで、樹木が二酸化炭素を吸収する新たなサイクルが始まります。
このため、伐って、使って、植える「森林資源の循環利用」がなされている森林からの木材を使うことは、SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」に貢献します。
木材は一般の住居以外にも、ビルや大型施設にも積極的に活用されています。地球環境にも貢献する木材の利用は、企業からも注目が集まっています。
東京の銀座にある商業ビル、HULIC &New GINZA 8はスギを中⼼に国産木材を柱や梁、天井に利⽤。また、日本の保険会社である東京海上日動は20階建て(高さ約100m)の新社屋の柱や床に国産木材を可能な限り多く使用すると発表し、2028年度の完成を目指して工事が進んでいるところです。
身近な生活用品から大型のビルまで、木材利用の可能性は拡がっています。
豊かな森林資源に恵まれ、古くからの木工技術が息づく日本。高度な技術により作られた日本の木材製品を、今、手にとってみませんか。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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