北海道に来ると、「なまら」「めんこい」といった、他の地域ではあまり耳にしない言葉や言い回しに出合うことでしょう。それが、北海道の方言である「北海道弁」です。方言の特徴は、その土地の風土と深い関係を持ちます。北海道には、明治期に開拓のために日本各地から人々が移住してきました。それが混ざり合って生まれた北海道弁は、日本全国で通じる共通語にかなり近い一方で、他の都府県の方言の影響も感じられる方言となっています。今回は、日常生活や旅行中に使える北海道弁をたくさんご紹介します。
日常生活で使える北海道弁
【めんこい】(menkoi)
「かわいい」という意味で使われます。
使用例:「めんこいペンギンだね」(かわいいペンギンだね)、「この子はめんこい」(この子はかわいい)
【なまら】(namara)
「とても」、「すごく」、「非常に」という意味で使われます。「なまら」をより強めて使いたいときには「ん」を入れて、「なんまら」と言うことも。
使用例:「この料理はなまらうまい」(この料理はとてもおいしい)、「なんまらびっくりした」(すっごくびっくりした)
【わや】(waya)
「ひどい」、「めちゃくちゃ」、「だめ」という意味で使われます。
使用例:「もうわや!」(もうめちゃくちゃ!)、「雪の量がわや」(雪の量がひどい)
【したっけ】(shitakke)
共通語でいうと「じゃあ」、「それでは」となります。また、「バイバイ」、「またね」など、別れの挨拶として使われることもあります。
使用例:「したっけあの店に行こうか」(それではあの店に行こうか)、「したっけね!」(またね!)
【(ゴミを)投げる】(nageru)
共通語では、「投げる」は「ものを投げる」、「ボールを投げる」という場合に多く使われますが、北海道弁では「捨てる」という意味でも使われます。
使用例:「ゴミを投げてくるね」(ゴミを捨ててくるね)
【こわい】(kowai)
共通語の「こわい」は、「恐ろしい」「恐怖」という意味ですが、北海道弁では「疲れる」、「だるい」、「くるしい」という意味でも使われます。
使用例:「走ったから体がこわい」(走ったから体が疲れた)、「今日はなんだかこわい」(今日はなんだかだるい)
【なんもなんも】(nanmo nanmo)
人にお礼を言われたときや、感謝を述べられたときに「気にしないで」「ちっとも」という意味を込めて「なんもなんも」と言います。「どういたしまして」よりも堅苦しくなく、気軽な印象を与える言葉です。
会話例:
Aさん「雪が降っているから駅まで車で送るよ」
Bさん「ありがとう!」
Aさん「なんもなんも」
【うるかす】(urukasu)
「水に浸ける、水を含ませる」「ふやかす」という意味で使われます。
使用例:「米をうるかす」(米を水に浸けておく)、「お茶碗をうるかしといて」(お茶碗を水に浸けておいて)
【いずい】(izui)
「しっくりこない」、「居心地が悪い」、「違和感がある」など、身体的な些細な不快感を表すときに使われます。
使用例:「目にゴミが入っていずい」(目にゴミが入って違和感がある)
【〜さる】(saru)
「意図に反して」、「勝手に」という場合に語尾につける言葉です。可能であることを示す「〜できる」と同じ意味で使う場合もあります。過去形は「〜さった」と言います。
使用例:「ボタンが押ささった」(押すつもりはなかったけど、ボタンを押してしまった)、「このペン、まだ書かさるよ」(このペン、まだ書くことができるよ)
【〜べ】(be)、【〜べさ】(besa)、【〜べや】(beya)
共通語で会話の語尾につける「〜だろ」、「〜でしょ」、「〜じゃん」と同じ意味です。相手に同意を求めるときや、疑問などを投げかけるときにも使えます。
使用例:「走るなって言ったべ」(走るなって言ったでしょ)、「明日のランチには誰が来るんだべ?」(明日のランチには誰が来るのかな?)、「うまいべさ?」(おいしいだろ?)
【〜しょ】(syo)
「〜でしょ」、「〜でしょう」という意味を表します。語尾につけて使います。
使用例:「昨日のコンサート、なまらよかったっしょ」(昨日のコンサート、とてもよかったでしょ)、「一緒に行くっしょ?」(一緒に行くでしょ?)
旅行中に使える北海道弁
【ちょっきり】(chokkiri)
「ちょうど」、「ぴったり」という意味で使われます。
使用例:「待ち合わせ時間ちょっきりに札幌駅に着いた」(待ち合わせ時間ちょうどに札幌駅に着いた)、「小銭が202円ちょっきりあった」(小銭が202円ぴったりあった)
【あずましい】(azumashi)
「居心地がよい」、「落ち着く」という意味で使われます。「落ち着かない」という意味で「あずましくない」という言葉も使います。
使用例:「ホテルの部屋があずましい」(ホテルの部屋の居心地が良い)、「周りが騒がしくてあずましくないね」(周りが騒がしくて落ち着かないね)
【内地】(naichi)
北海道以外の都府県、つまり道外を意味します。主に本州のことを指します。
使用例:「内地に住む友だち」(道外に住む友だち)、「これから内地に旅行に行くんだ」(これから本州に旅行に行くんだ)
【はかいく】(hakaiku)
「はかどる」、「進む」という意味で使われます。
使用例:「旅館のおかずがおいしくて、ご飯がはかいく」(おかずがおいしくて、ご飯がすすむ)
【おだつ】(odatsu)
「調子に乗る」、「はしゃぐ」、「舞い上がる」という意味です。主に子どもに対して注意するときに使われます。
使用例:「旅行に来たからといって、あんまりおだつんじゃないよ」(旅行に来たからといって、あまりはしゃぐんじゃないよ)
【しゃっこい(ひゃっこい)】(shakkoi)
「冷たい」という意味で使われます。
使用例:「川の水がしゃっこい」(川の水が冷たい)
【しばれる】】(shibareru)
「冷え込む」、「ひどく冷え込んでいる」という意味です。
使用例:「北海道の冬はなまらしばれるね」(北海道の冬はひどく冷え込むね)
【(手袋を)はく】(haku)
共通語では手袋を「はめる」といいますが、北海道では「はく」と言います。
使用例:「寒いから手袋をはいて出かけよう」(寒いから手袋をはめて出かけよう)
番外編の北海道弁
【サビオ】(sabio)
サビオとは、絆創膏の商品名です。商品名はほかにもたくさんありますが、北海道で最も広く知られているのが「サビオ」であったため、「絆創膏=サビオ」という認識が浸透していきました。サビオは2002年に販売を終了しましたが、いまだに「サビオ」と呼んでしまう人もいます。
【ハイヤー】(haiya)
ハイヤーは多くの場合、完全予約制で、道端で拾えるタクシーとは配車の形態が異なります。料金はタクシーに比べて若干割り高ですが、乗り心地の良い高級車で送迎してくれるなど、サービスが充実しています。しかし、北海道ではタクシーをハイヤーと呼ぶ人もいます。「ハイヤーを呼んでおいた」と言われ、黒塗りの高級車を想像していると、タクシーが来てびっくりした、という話もあります。
【ゴミステーション】(gomi-station)
北海道では、住宅地にある住民用のゴミ置き場のことをゴミステーションと呼びます。「ゴミ収集車が来る前に、ゴミステーションにゴミを持っていって」とは、「ゴミ収集車が来る前に、ゴミ置き場にゴミを持っていって」という意味です。
【そだねー】(sodane)
共通語では「そうだね(soudane)」と発音します。北海道では、「う」が抜けて語尾が伸び、平たんな発音になります。2018年に開催された平昌五輪で、カーリング女子日本代表チーム「LS北見」の選手たちが試合中に「そだねー」と使い、その独特のイントネーションが話題となりました。
北海道弁とアイヌ語は異なる言語
北海道の地名などには、アイヌ語がルーツとなっているものが多くあります。アイヌ民族は、地形の特徴などから土地や川に名前をつけました。その名前に、音や意味が合う漢字・カタカナが当てはめられ、現在の名称になりました。北海道の市町村名のなんと約8割はアイヌ語に由来するといわれています。小樽は「オタ・オル・ナイ(砂浜の中の川)」、札幌は「サッ・ポロ・ペッ(乾く・大きい・川)」というアイヌ語が、その名の由来です。
このため、北海道弁とアイヌ語を混同してしまう人もいるようですが、北海道弁は日本語の一方言で、アイヌ語とは別の言語です。それぞれに言葉のおもしろさがあるので、北海道に来たときは、ぜひ北海道弁とともにアイヌ語にも関心を持ってみてください。
日常生活でも旅先でも、いろいろなシーンで使える北海道弁。旅行中に、ぜひ使ってみましょう!
Text by:みんなのことば舎
※本記事の情報は2021年4月時点のものです。
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