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北海道の中心、札幌にある憩いの場といえば円山公園。敷地内には国指定天然記念物の円山原始林が広がり、野球場などの運動施設を備える広大な自然公園です。そこに隣接するのが北海道神宮と札幌市円山動物園。北海道神宮は開拓の歴史と重なる北海道の総鎮守です。札幌市円山動物園は、円山原始林との境界部分に、約2haもの「動物園の森」があり、国内でもこれだけ自然豊かな動物園は他に類を見ません。子どもからお年寄りまで、多くの人々に愛され続ける札幌市円山動物園の魅力をご紹介しましょう。日本語がわからなくても存分に楽しめるでしょう。
命をつなぎ未来を想い心を育む動物園
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札幌市円山動物園は1951年(昭和26年)、北海道で初めての動物園として開園しました。開園のきっかけは、前年に札幌市が東京の上野動物園を移動動物園として招いたこと。会場となった円山坂下グラウンド、円山公園一帯は空前の人出で賑わい、「札幌にも動物園を」という機運が高まり、待望の開園を迎えました。
開園当時は児童遊園という位置付けで、動物はヒグマ2頭、エゾシカ、オオワシの三種4点のみ。その後、動物展示の充実と施設整備が進められ、1974年(昭和49年)には当時の札幌市の総人口に迫る約124万人もの年間来園者が訪れました。現在、札幌市円山動物園には、168種943点の動物が飼育されています(2019年3月30日現在)。
札幌市円山動物園は、開園100周年を迎える2050年までの基本ビジョンを作成し、施設や空間づくり、展示方法などの見直しや整備を進めています。そのコンセプトは、動物の福祉を充実させることで動物の本来の姿を引き出し、生き生きした動物の行動を観客が見ることで保全の重要性を感じられる「生息環境展示」。そのため最適な飼育環境を確保するために、本来の姿での展示が困難な動物は、追加導入を行わないという思い切った方針です。まさに“動物ファースト”の視点!特に、ここ最近導入されたアジアゾウは、見るからにのびのび生き生きと生活している様子が感じられます。そんな札幌市円山動物園の見どころを巡ってみましょう。
まずは市民待望のゾウ舎に注目!
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今最もホットな話題が、2019年3月12日から一般公開が始まったゾウ舎です。2007年に人気者だったアジアゾウの「花子」が亡くなって以来、ゾウがいない日々が続きました。市民から「円山動物園にゾウを呼ぼう」との声が上がり、2012年に約3万筆の署名が集まりました。それから6年の歳月を費やし、2018年11月、気温30度のミャンマー・ヤンゴン国際空港から、気温0度の新千歳空港にメス3頭、オス1頭のアジアゾウがやってきたのです。
ゾウに優しい設備やアイデアが満載
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新築のゾウ舎は国内最大級。その中に、ゾウたちのことを考えた設備と飼育の工夫がぎっしりと詰まっており、それが観客を楽しませる魅力になっています。施設は屋外放飼場と屋内放飼場に分かれています。ゾウの足の健康を保ち、土中の餌を探して食べられるよう、屋外には50cm、屋内には1mもの砂が敷き詰められています。コンクリートの床では立って寝るゾウですが、ここでは気持ちよさそうに長い時間横になって寝ています。また、傾斜のある森の中での暮らしと同じように、舎内にはアップダウンを設けています。
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砂浴びと同様に大事な水浴びも好きなだけできるように、屋内外に深い水場を設置。屋内の水場は、水中の様子を観客が見られるようにガラス張りになっています。写真はモニターに映し出された映像ですが、運が良ければこんな水浴びシーンを見ることもできるでしょう。屋内の天井にはミスト装置が設置され、ゾウたちはスコールを浴びることもできます。
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屋内外のどこにいるか…食事をしているか、運動をしているか、すべてゾウたちの気分次第。鼻を伸ばして届くくらいの高さに備えられた餌の干し草を食べる様子、穴の空いた壁から鼻だけ突き出して餌を探す様子など、見たことのない生き生きとした行動を楽しむことができます。水場に入るのはまれですが、何時間見ていても飽きないので、そのうちチャンスに巡り合えるかも。ただしゾウ舎の見学は、ゾウの体調や天候にもよりますが、11:00ごろから15:30までと制限されていますのでご注意を。
頭上をスイスイ泳いでいく動物たち
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2018年にリニューアルした「ホッキョクグマ館」も人気展示の1つです。2階建ての施設には深いプールが備えられ、全長18mもの水中トンネルもあります。そのトンネル内にいると、ホッキョクグマが頭上を泳いだり目の前に現れたり。泳ぎや潜水がとても上手なことがわかります。
そして、この施設はゴマフアザラシとゼニガタアザラシと同居。もちろんホッキョクグマと飼育環境は仕切られていますが、アザラシを餌としているホッキョクグマは、時折興奮したような仕草をするとか。われ関せず、悠々と泳ぐアザラシたちの様子がユニークです。愛嬌たっぷりの姿がじっくりと楽しめますよ。
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北海道ゆかりの動物たちものびのび
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北海道ゆかりの動物たちの展示も見ものです。「エゾシカ・オオカミ館」では、大きく勇壮なシンリンオオカミと、北海道に生息するエゾシカが隣り合って展示されています。話題のアニメ「ゴールデンカムイ」にエゾオオカミが登場することから、絶滅したエゾオオカミに思いをはせる人で「エゾシカ・オオカミ館」は密かな人気となっています。そして、その隣には「エゾヒグマ館」が。その大きさと迫力に圧倒されることでしょう。
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好きな動物に、繰り返し会いたくなる
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「アジアゾーン/高山館」のシセンセッサーパンダも見どころの展示の1つです。屋外ではやぐらを行き来したり、木の葉を食べる愛くるしい様子が眺められます。さらに屋内に入るとその天井には、むき出しの橋が備えられ、レッサーパンダが頭上をスタスタと歩き回っているのです。下に降りて逃げ出さないのかとハラハラドキドキ。さえぎるものがない空間で、かわいらしいレッサーパンダと一緒に過ごすことができます。
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注目施設はまだまだあります。「アジアゾーン/寒帯館」には、私たちの頭上に、あたかも木の上で寝そべっているかのようなユキヒョウがいます。「アフリカゾーン」の「カバ・ライオン館」では、ガラス越しに迫る水中のカバや、たてがみを揺さぶりながら歩くライオンに出会うことができます。
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「キリン館」では、食事中にキリンの長い首の中を食べ物が行き来している様子に注目。キリンは食べたものを消化するために首で反すうするそうです。それぞれの動物舎には、こうした興味をそそる豆知識が掲示されています。ここでしか見ることのできない展示がいっぱいの円山動物園。何度繰り返して訪れても、飽きることはありません。
営業時間:3月1日〜10月31日9:30〜16:30、11月1日〜2月末日9:30〜16:00 ※入園券の販売と入園は、閉園の30分前まで 料金:高校生以上600円(年間パスポート1000円)、中学生以下無料 定休日:第2・4水曜(祝日の場合は翌日)、4月・11月は第2水曜を含むその週の月曜〜金曜、12月29日〜31日
アクセス:地下鉄東西線円山公園駅より徒歩15分
Text by : みんなのことば舎
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Sapporo Maruyama Zoo
- 住所 〒064-0959 札幌市中央区宮ヶ丘3-1 / Miyagaoka 3-1, Chuo-ku,Sapporo 〒064-0959
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。