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北海道名物の日本料理「炉端焼き」とは?釧路で誕生した背景やおすすめの食べ方を解説

北海道名物の日本料理「炉端焼き」とは?釧路で誕生した背景やおすすめの食べ方を解説

更新日: 2022/04/23

北海道名物の「炉端焼き」とはどんな料理か知っていますか?炉端焼きとは、客席の目の前で店員が魚介類や野菜などを炭火で焼いて提供する日本料理です。東北地方の宮城県仙台市で炉端焼きの原型が誕生し、新鮮な海産物が多々水揚げされる、北海道東部の釧路市から各地へ広まっていったと言われています。釧路市にある老舗炉端焼店「炉ばた」を訪ね、炉端焼きの歴史やおすすめの食べ方などを探り、解説します。

目次
  1. 炉端焼きとはどのような料理?
  2. 炉端焼きが釧路で名物となった背景
  3. 炉端焼きは日本の焼き鳥と何が違うの?
  4. 炉端焼きはどのような食材を使うのか?
  5. 炉端焼きはどのように食べるか?「炉ばた」で実践
  6. 店内に唯一価格表記されているメニューは生ビール600円

炉端焼きとはどのような料理?

炉端焼き店は囲炉裏を囲むようにカウンター状の客席が並びます
炉端焼き店は囲炉裏を囲むようにカウンター状の客席が並びます

炉端焼きとは、客席に囲まれた囲炉裏(いろり)で店員が魚介類や野菜などを炭火で焼き、提供してくれる日本料理です。囲炉裏とは、店員が炭火で食材を焼いたり日本酒を温めたりする場所のことで、炉(ろ)とも呼ばれています。

炉端の「炉」は囲炉裏のことを指し、「端」は囲炉裏の端を意味します。囲炉裏の端で食事を楽しむスタイルのため「炉端」と呼ばれるようになり、囲炉裏の端で焼き物を楽しむという意味から「炉端焼き」と言われています。建物や店内内装などが日本古来の建築様式であることが多いです。

囲炉裏で焼く店員を「焼き手」と言います。「炉ばた」では2022年度で86歳になる中島静子さんが長年焼き手を務めます
囲炉裏で焼く店員を「焼き手」と言います。「炉ばた」では2022年度で86歳になる中島静子さんが長年焼き手を務めます

ただし、店により提供スタイルが異なります。客席に囲まれた囲炉裏で食材を焼いて提供する店もあれば、囲炉裏では日本酒を温めるのみで食事は裏の厨房で調理したものを提供する店、客自らが目の前にある囲炉裏で焼いて食べる店など、さまざまなスタイルがあります。店員が囲炉裏で日本酒を温めるのみの場合は「炉端焼き」ではなく「炉端」と称し、客自ら囲炉裏で焼いて食べる場合は「海鮮バーベキュー」などと言われることもあります。

炉端焼きが釧路で名物となった背景

炉端焼きに欠かせない囲炉裏のイメージ(画像素材:PIXTA)
炉端焼きに欠かせない囲炉裏のイメージ(画像素材:PIXTA)

炉端焼きの発祥については諸説あります。宮城県仙台市が発祥と言われることがあるほか、北海道釧路市が発祥とも言われています。

「炉ばた」の焼き手中島静子さんとスタッフのみなさん。中島静子さんの叔母が同店の創業者です
「炉ばた」の焼き手中島静子さんとスタッフのみなさん。中島静子さんの叔母が同店の創業者です

釧路市の「炉ばた」のみなさまのお話によると、同店が開店したのは1953年頃。釧路市が漁業の町として活況を呈していた時代です。「炉ばた」の創業者は、「客席に囲まれた囲炉裏で日本酒を温め、裏で調理した田舎料理とともに提供する、風変りなお店が仙台市にある」と話を聞いたことにヒントを得たそうです。

釧路市の新鮮な魚介類を焼きたての状態で提供したいと考え、仙台市の囲炉裏を囲むスタイルを活かしつつも食事提供方法を変え、客席の目の前の囲炉裏で食材を焼いて提供する店を出すことにしました。

「炉ばた」店内の壁や天井は、炭火による炭の粉と魚の脂が70年近く蓄積し黒光りしています
「炉ばた」店内の壁や天井は、炭火による炭の粉と魚の脂が70年近く蓄積し黒光りしています

釧路市で開店した「炉ばた」は、主に地元の名士の方々に接待の場として利用されました。北海道内外から訪れた大事な顧客に対し、釧路名物の上質な魚介類を手軽に提供できるからです。接待需要で人気が出たため釧路市内に同業他社が複数できるとともに、各地から訪れた接待客を通じて北海道札幌市をはじめ日本各地へと伝わっていったのではないかと考えられています。昨今は魚介類が豊富な北海道の名物料理の一つとして定着しました。

炉端焼きは日本の焼き鳥と何が違うの?

炭火で焼く焼き鳥のイメージ(画像素材:PIXTA)
炭火で焼く焼き鳥のイメージ(画像素材:PIXTA)

日本には炭火で焼く料理で「焼き鳥」もありますが、「炉端焼き」とは別の料理です。「焼き鳥」とは、鶏肉などを一口サイズにカットして竹などの串に刺し、炭火などで焼いた食べ物。基本的に串に刺していない食べ物を「焼き鳥」ということはあまりなく、メイン食材は鶏肉で、北海道では鶏肉のほか豚肉もよく使われています。

「炉端焼き」の場合、食材を串刺しにして焼く場合もありますが、串の有無は関係ありません。また、「炉端焼き」の食材に鶏肉など肉類を使うこともありますが、メイン食材は魚介類や野菜です。

炉端焼きはどのような食材を使うのか?

左下から反時計回りに、本シシャモ、シイタケ、じゃがいもバター、カレイ
左下から反時計回りに、本シシャモ、シイタケ、じゃがいもバター、カレイ

「炉端焼き」に使用する食材は魚介類と野菜がメインで、店によっては肉類が使われることもあります。具体的な食材は地域や店によってさまざまで、立地する地域の旬の食材や名産品が使われることが多いです。

一般的によく使われる食材は、魚介類だと「ホタテ」「カキ」「エビ」「イカ」「ホッケ」「カレイ」「シシャモ」「サンマ」「サケ」などで、野菜は「ナス」「シイタケ」「ピーマン」「アスパラガス」「ジャガイモ」など。店によっては豚肉や鶏肉などの肉類を用意しているほか、囲炉裏を使わない料理で煮物や汁物、丼飯などもあります。

北海道の名産アスパラガスは5月から6月が旬
北海道の名産アスパラガスは5月から6月が旬
アルミホイルに包まれ蒸し焼きにしたジャガイモはホクホク!切れ目にバターが入っています
アルミホイルに包まれ蒸し焼きにしたジャガイモはホクホク!切れ目にバターが入っています

「炉ばた」で提供している食材は釧路市や近郊の魚介類と野菜が中心。冷凍食材は一切使わないため時期ごとに食材が異なります。

例えば、4月前後は「時鮭」という脂がのったサケ、6月から8月位まではエビ味噌が濃厚な「北海シマエビ」、9月以降は「サンマ」、11月からは「本シシャモ」が旬の食材として登場。野菜は一年中食べられる食材が多いものの、旬の時期だとみずみずしさや甘さがより際立ちます。肉類は豚肉とエゾシカ肉を用意しています。

アサリの酒蒸しは貝の出汁が効いた塩味の汁物
アサリの酒蒸しは貝の出汁が効いた塩味の汁物

炭火焼きの料理以外では、旬の新鮮なネタを使った「刺身盛り合わせ」「イクラ丼」やサケ切り身が丸ごとのった「お茶漬」、アサリを日本酒で蒸した汁物「アサリの酒蒸し」などが人気です。

炉端焼きはどのように食べるか?「炉ばた」で実践

JR釧路駅から徒歩12分、釧路市の繁華街にある「炉ばた」は純和風の建物で趣があります
JR釧路駅から徒歩12分、釧路市の繁華街にある「炉ばた」は純和風の建物で趣があります

炉端焼きはどのように食べるのか、お店によって差異はありますが、「炉ばた」を例に紹介します。なお、「炉ばた」は人気店にて満席で入れないことがあるので、事前に電話か公式サイトから予約をするのがベスト。公式サイトは日本語のほか、英語、中国語、韓国語にて閲覧と予約が可能です。

日本建築の代表的な建具、障子(木枠に和紙を挟んだ戸)の扉を開けると、古めかしいながらも重厚な美しさを感じられる店内が広がります。壁や天井、テーブルなどもすべて木製で、日本古来の建築様式。テーブルの奥の壁にかかる古時計や食器を入れている和ダンスも年代物で必見!日本建築を見慣れた日本人ですら、アッと驚き写真を撮りたくなる雰囲気です。

店内に入ったら店員の案内に従い、囲炉裏を囲むカウンターのような席に座ります
店内に入ったら店員の案内に従い、囲炉裏を囲むカウンターのような席に座ります

まずは飲み物をオーダーしましょう。居酒屋ではないのでお酒の種類は少ないのですが、生ビールやハイボール、日本酒などのほか、烏龍茶や緑茶もあります。日本酒は福司(ふくつかさ)という釧路にある蔵元(日本酒メーカー)のお酒で、冷酒(冷蔵庫で冷やしたお酒)、常温(室温のお酒)、燗(囲炉裏で温めたお酒)の3つの飲み方から選べます。

燗は囲炉裏の中の壺で温めた日本酒で、オーダーが入るごとに柄杓ですくって提供します
燗は囲炉裏の中の壺で温めた日本酒で、オーダーが入るごとに柄杓ですくって提供します

お酒をオーダーしたのち、食事メニューを選びましょう。「炉ばた」のメニューは日本語と英語が併記されていて、一部メニューは写真付きで日本語のほか英語と中国語も併記されているので、日本語が読めない方でもオーダーしやすいです。ただし、メニュー表には料金の記載が一切ありません。

「炉ばた」は元々接待客が多いことから、「接待される客に料金を明示することは、接待する客にとっては恥ずかしいことで失礼にあたるため、価格表記はしない」という創業者の考え方を踏襲しているからです。

店内に唯一価格表記されているメニューは生ビール600円

店内に唯一価格表記されているメニューは生ビール600円
店内に唯一価格表記されているメニューは生ビール600円

料金が不明だと不安に感じるかもしれませんが、店員に聞けば料金を教えてくれるのでご安心を。価格はその日の仕入れ価格次第にて前後しますが、概ね魚介類は1品1,000円前後で野菜類は500円から800円程度、イクラ丼などの丼物は1,300円から1,500円程度のことが多いそうです。
ただ、高級魚は1品7,000円程度することもあるので、不安な方は価格を聞きながらオーダーしましょう。支払いは食事を終えて退店する時。クレジットカードも利用可能です。

焼きあがるまで時間がかかるので、その間はゆっくりお酒と「お通し」を楽しみましょう
焼きあがるまで時間がかかるので、その間はゆっくりお酒と「お通し」を楽しみましょう

お酒が出てくるタイミングの前後に、「お通し」が出てきます。「お通し」は日本独特の食文化で、メインの食事が来るまでの間にお酒を飲みながら食べられる簡単な料理のことを指します。

「お通し」は席料・チャージ料の意味を持つため断ることはできず、日本料理店などではほぼ必ず発生します。「お通し」の価格は一般的に1人数百円程度のことが多く、「炉ばた」では1人500円です。「お通し」とお酒が出てきたら、食べつつ飲みつつ、オーダーした料理が出てくるのを待つのみ。

じっくり炭火で炙って美味しく焼き上げてくれます
じっくり炭火で炙って美味しく焼き上げてくれます

炭は釧路市の隣の鶴居(つるい)村のナラ材などを主に使用。炭の置き方や火加減の強弱のつけ方、食材を焼く場所やタイミングなど、定休日以外ほぼ毎日囲炉裏の前に座り続けている“焼き手”にしかわからない熟練の技と勘、ルールがあるそうです。

焼きあがったらすぐに食べやすいサイズにカットしてくれます
焼きあがったらすぐに食べやすいサイズにカットしてくれます
醤油を垂らし、香ばしい味わいに
醤油を垂らし、香ばしい味わいに
焼き手を正面に見ながら食事を楽しみます
焼き手を正面に見ながら食事を楽しみます

焼き上がった料理の数々を箸で食べます。提供時に塩や醤油で味付けしされているので、そのまま食べてもじゅうぶん美味しいですし、少し濃い味にしたい場合は卓上にある醤油をかけて食べられます。味わい方はご自由に。1品ごとのボリュームが意外と多いので頼みすぎには注意したいのですが、追加オーダーも可能です。

日本酒の燗とともに焼き魚などを味わいましょう
日本酒の燗とともに焼き魚などを味わいましょう
たっぷり盛られたイクラとサケの親子丼。食事の最後におすすめ!
たっぷり盛られたイクラとサケの親子丼。食事の最後におすすめ!

◎実施中の新型コロナ感染症対策
店舗・施設内や設備等の消毒・除菌・洗浄/除菌・消毒液の設置/お客様の入れ替わり都度の消毒/店舗・施設内換気の実施/コイントレイの利用、おしぼりトング/仕切り板の設置/スタッフのマスク着用・手洗い・消毒・うがい・検温の実施/入店人数や席間隔の調整/入場制限、予約制の実施/体調不良のお客様の入店お断り/お客様へのマスク着用のお願い

  • 炉ばた
    • 住所 〒085-0013 北海道釧路市栄町3丁目1
    • 電話 0154-22-6636
    • 営業時間:17:00~23:00
      定休日:日曜日(2月と4月下旬~5月上旬と8月~10月は不定休)
      ※ 新型コロナウィルス感染拡大の状況により、営業時間等は変更の可能性があります

「炉端焼き」の醍醐味は、日本の伝統的な雰囲気の建物のお店で、新鮮な食材を焼き手が目の前で焼いて提供してくれること。焼き上がりを待つ間が待ち遠しくワクワク感があるのも魅力です。熟練の技で焼き上げた料理はどれも美味しく、お酒にもよく合います。「炉端焼き」は日本の食文化を思う存分体感できますよ。

Text by:川島 暢華
※本記事の情報は2022年3月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。

※記事掲載時の情報です。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。

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