日本古来の伝統的な食品、“餅(もち)”は、正月だけでなく、さまざまな年中行事で食べられています。また、最近はアメリカなどでも「Mochi」と、「Sushi」や「Ramen」などのようにそのまま浸透しているようです。
そんな「餅」は、地方によって形や食べ方が多種多様。その歴史や効能など、日本人の食生活にとってなじみ深いお餅の基礎知識をご紹介します。
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■お餅とは
お餅とは、もち米を加工して作る食品の“餅”を、丁寧語で表したものです。通常はもち米を蒸して杵でついたもの指しますが、穀物や米粉、くず粉などを用いて作るものも広く餅と呼ばれています。丸や平らにした食べ物です。
冒頭にご紹介した海外での「Mochi」ですが、こちらは『雪見だいふく』のようなアイスとして認識されている場合が多いそうです。
■お餅の効能
お餅には、運動時の主なエネルギー源となる糖質(炭水化物)が豊富に含まれています。100gに含まれる炭水化物を比較すると、ごはんが約37gなのに対し、お餅は約50gも含まれています。
また、コンパクトに栄養補給をしやすいというメリットもあります。茶碗や丼に盛られたごはんだと箸が進まない時でも、お餅なら2つや3つ食べられるという人も少なくありません。汁物に入れたり、大根や納豆などからませて他の栄養素を同時に摂取したりと、色々な食べ方ができるのもお餅の優れた点です。
■お餅の歴史
餅の文化は稲作文化とともに伝わったと考えられています。日本ではとくに、餅の粘りに対する特有の嗜好を持っていたため、特有の餅文化を作り上げたと言われているそうです。奈良時代の文献にも記載があり、当時は貴族のお菓子として用いられたようです。
平安時代になると行事食が確立し、1月の鏡餅や3月の草餅、5月の柏餅などが登場しました。鎌倉時代にぼたもちや焼き餅、餅菓子が一般化し、江戸時代にはますます一般に広まって、年中行事には餅菓子が使われるようになりました。
■お餅はいつ食べる ?
古くから日本人に親しまれてきたお餅は、色や形、味付けに意味を込められた縁起物として、四季折々の節句のお祝いなどで食べられています。
・鏡餅
平たく丸い餅を重ねて、お供えとしたもの。三種の神器のひとつである、神が宿るとされた鏡を模したものと言われています。ミカンを乗せる人が多いですが、正式には「橙(だいだい)」という果物で、「代々、家が繫栄するように」と願う語呂合わせです。多くの地域で、1月11日の「鏡開き」まで飾った後に食べられます。
・ひし餅
邪気を払い、強い生命力を象徴すると言われる「よもぎ」で作った草餅を菱形にしたのが始まりとされています。地域によって違いはあるものの、3月3日のひな祭りには、緑・白・桃色の3色が飾られます。色はそれぞれ健康、清浄、魔除けを意味すると言われています。
・ぼたもち、おはぎ
炊いた後に潰したもち米やうるち米に、餡、きな粉、胡麻などを付けたもの。彼岸に供える風習から始まった菓子で、春に作るものは「ぼた餅」、秋は「萩の餅(おはぎ)」と呼ばれています。地域によっては、こしあんを使うと「ぼた餅」、粒あんなら「おはぎ」と呼びます。
・桜餅
鉄板上で薄く延ばして焼いた餅で餡を包み、桜の葉で巻いた餅菓子。桜の名所である墨田川沿いの長命寺が発祥と言われ、春によく食べられています。関西では餡が入った俵形の餅菓子を使ったものが多く、「道明寺桜餅」、あるいは「道明寺」と呼ばれています。
・柏餅
平たく丸い餅を2つに折って餡を挟み、柏の葉で包んだ餅菓子。江戸時代に作られ始めたと言われています。5月5日に男児の成長を願う、端午の節句の供え物に使われています。新芽が育つまで落ちないことで知られる柏の葉に、子孫繁栄の願いが込められています。
・月見団子
関東は丸、関西では里芋形の餡を包んだ団子を用いるケースが多く見られます。平安時代に中国から伝わった風習で、秋の収穫に感謝を込めて、中秋の名月に供え物をしたのが由来とされています。
■日本人はお餅をどのくらい食べる ?
総務省の統計によると、日本人のお餅の年間消費量は一世帯(二人以上の世帯)あたり平均2,300gほど。市販の切り餅が1個およそ54gなので、一家族が1年で約43個のお餅を食べていることになります。
年間を通して餅への支出が最も多いのは12月。餅は食べるだけでなく正月のお供えとして神棚に飾ることも多いので、一夜飾りにならない12月30日に買う人が多いようです。
■お餅による窒息事故に注意
お餅は温度が下がるほど、硬さやくっつきやすさが増すという特徴があります。お椀の中では一見柔らかそうに見えても、口の中に入れて喉を通るときには、思ったより硬くて喉にくっきやすいのです。
そのため、お餅を食べる機会が増える1月、とくに正月三が日(1月1日(元日)・1月2日・1月3日の3日間)には、餅による窒息事故が多く発生します。
お餅による窒息事故は、噛む力や飲み込む力が弱くなり、唾液の分泌が少ない高齢者に多く、中には死に至ってしまうケースもあります。お餅は小さく食べやすい大きさに切り、お茶や汁物を飲んで喉を潤してから食べましょう。また、一度にたくさん頬張らず、よく噛んでから飲みこむようにしましょう。
■地方によっての特色
餅の形には、一般的に四角い形の「角餅」と丸い形をした「丸餅」があり、地域ごとに、どちらの形が多く食べられているかが異なっています。
日本の東側と西側で形が異なり、その境目は岐阜県の関ケ原辺り。境界線付近では角・丸の両方を食べる県もありますが、東側では角餅、西側では丸餅が主に食されています。
とくに餅が入った汁物であるお雑煮は、地域や家庭ごとにさまざまなレシピがあり、特色の違いが顕著に表れます。たとえば、東日本の多くの地域では、角餅を焼いてすまし汁に入れます。
関西では丸餅を煮て味噌仕立ての汁を使い、中四国・九州地方では丸餅を煮てすまし汁に入れる地域が多いです。山陰地方では丸餅を煮て小豆汁に入れるところも。実家がどんなお雑煮だったかというのは、日本人が自分のルーツを語り合う際にもよく出る話題です。
■お餅の定番メニュー
家庭によって多種多様なレシピが存在するお雑煮の他にも、お餅の定番メニューはたくさんあります。
・磯辺餅
焼いた餅に醤油を付け、海苔を巻いた料理。醤油に砂糖を入れて甘辛い味付けにすることもあります。
・きな粉餅
湯がいた餅に、きな粉と砂糖を和えたパウダーを纏わせて作ります。
・からみ餅
醤油を加えた大根おろしで和えたお餅。かつお節、海苔、唐辛子、ネギなどを加えることもあります。
・お汁粉
小豆などを砂糖で甘く煮た汁の中に、餅や白玉団子、栗の甘露煮などを入れた料理です。
■お餅のアレンジメニュー
日本人になじみ深いお餅は、さまざまな料理に取り入れられることも。お餅を使ったアレンジメニューが日々登場し続けています。
・餅ピザ
ピザ生地の代わりに、薄くスライスしたお餅を使います。お餅に好きな具をトッピングし、フライパンやトースターで作れるので、家庭でも簡単にできるアレンジレシピです。
・明太もちチーズもんじゃ
タコ焼きやお好み焼きと並び食される「もんじゃ焼き」では、お餅をトッピングしたメニューが定番人気となっています。明太子とお餅、チーズの相性が抜群です。
・餅巾着
油揚げの中にお餅を入れて口を閉じた、巾着袋のような見た目の料理。日本食の「おでん」に欠かせない具の一つです。
・かき餅
鏡餅を砕いたり、お餅を細かくカットして干したりしたものを「かき餅」と言います。油できつね色になるまで揚げることで、おやつにぴったりのサクサク食感を楽しめます。
以上、お餅の基礎知識をご紹介しました。日本では地域や行事ごとに多様な種類や食べ方があり、その楽しみ方は無限大です。ぜひ、自分ならではの楽しみ方をしてみてくださいね。
参考:
餅 - 日本大百科全書
餅への支出/家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2018年(平成30年)~2020年(令和2年)平均 - 総務省統計局
年末年始、餅による窒息事故に御注意ください! – 消費者庁
aff(あふ) バックナンバー 2020年1月号「特集2 餅」- 農林水産省 (https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/index.html)を加工して作成
編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。
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