日本では喫煙に関する法律が変わり、2020年4月1日から飲食店では原則禁煙(※)となりました。飲食店で喫煙を認める場合には、喫煙専用室などの設置が必要となり、受動喫煙に対してより規制が強まることになります。
(※)規制の対象は客席部分の床面積が100平方メートル超、資本金5000万円超の比較的規模の店舗。東京都の場合は「従業員がいる」店も禁煙対象となる
新しく施行される国の改正健康増進法(改正法)と東京都の受動喫煙防止条例(都条例)は、飲食店に限らず、工場やホテル、事務所などにも適用されます。また、日本人に限らず日本で働く外国人や、海外から訪れる観光客にももちろん適用されます。
このような変化を日本で生活する外国人はどのように感じているのでしょうか?今回は飲食店での原則禁煙に関して喫煙者、非喫煙者の外国人にそれぞれインタビューしました。(各コメントは回答者個人の意見です)
日本の喫煙規制、母国の規制に比べて厳しい?
日本ではこれまで喫煙に対する対処の仕方は飲食店や職場ごとに異なっていました。法律の改正で規制が強化されるわけですが、海外では喫煙者に対してどのように分煙化が進められているのでしょうか?
「母国では屋内は全面禁煙ですが、屋外は禁煙ではありません。ですので路上喫煙は日本よりはるかに多いですし、道にあるゴミ箱に灰皿がついていたりします。パブでもカフェでも屋外テラスなら喫煙可能です。日本のような分煙室は見かけたことはありません。日本の規制はまだまだ緩いと思います。電子タバコを吸っている人をよく見かけますね」(喫煙者のイギリス人男性)
イギリスでは屋内での喫煙は日本よりもさらに規制が厳しいようですが、路上喫煙など屋外での喫煙にはあまり制限がないようです。
電子タバコや加熱式タバコは煙が少ないことで日本でも広がりを見せています。厚生労働省の2018年国民健康・栄養調査によると、喫煙者男性の30.6%、喫煙者女性の23.6%が加熱式タバコを利用しており、その利用率は増加傾向にあります。
2020年4月1日施行の改正健康増進法では、この加熱式タバコも規制の対象となっています。また、ニコチンやタールを含む電子タバコも規制の対象です。加熱式タバコや電子タバコも規制の対象となっていることは日本国内でもあまり周知されていないため、日本に住む外国人も注意が必要です。
外国人から見た全体的な印象としては、日本の規制はまだまだ母国に比べると緩いと感じているようなので、飲食店での原則禁煙がスタートしても日本での生活に息苦しさなどは感じないようですね。
「イタリアで喫煙ができる場所は、自宅または空き地のみです。イタリアの喫煙者は40~45%くらいだと思います」(非喫煙者のイタリア人女性)
あくまでもインタビューを受けてくださった方の個人的な印象ですが、イタリアは日本より規制が厳しい割には、喫煙率は40~45%とかなり高いようです。
厚生労働省の同調査によると、日本では男性の29.0%、女性の8.1%が喫煙しているようです。日本人男性の喫煙率については、約50年前には80%を超えていたようですから、年々減少傾向にあるようです。
インタビューに回答してくださった方はイギリスとイタリアの方でしたが、ヨーロッパ各国でも喫煙に対する規制は各国でかなり差があることが分かりました。
飲食店での原則禁煙スタート!あなたは知ってた?
日本では2020年4月1日に施行される飲食店での原則禁煙ですが、法律自体は2018年7月に成立し、以前から周知活動も始められていました。この変化について、日本に住む外国人は知っているのでしょうか?
「飲食店で原則禁煙になることは、初めて知りました。日常的に吸っている立場としては、制限がかかることは残念ですが、もともと母国では屋内で吸えなかったので、あまり変わらないですね。これからもたばこを吸う場所には気を付けたいと思います」(喫煙者のイギリス人男性)
「飲食店が原則禁煙になることは、知っていました。とても嬉しく思っています。受動喫煙は様々な病気の原因となる心配があるため、すべての人の健康にとって、とても良いことだと思います」(非喫煙者のイタリア人女性)
飲食店での原則禁煙については、喫煙者と非喫煙者で意識の差が感じられました。非喫煙者は受動喫煙に対する危機感が強いために法律の改正により高い関心を持っているようです。受動喫煙の場合には、自分の意に反して健康を害してしまう可能性があるわけですから、非喫煙者がより高い関心を持っているのも当然でしょう。
この傾向は日本国内でも同様で、喫煙者の約70%は法律の改正自体を「知らない」と回答しています。今回の変化は喫煙者にダイレクトに影響するものですので、今後の広報活動と実行の徹底が重要になりそうです。
ただ、海外での多くの国では、特に飲食店など屋内での喫煙に対する、より強い施策がすでにとられていることもあり、変化に対する否定的な意見はあまり聞かれませんでした。喫煙する外国人も、非喫煙者に対して不快な思いをさせたくないという気持ちが強いようです。
喫煙に対する今後の変化、喫煙者/非喫煙者の外国人はどう思う?
以前にも増して健康に対する意識が高まり、世界的にも分煙が推進される時代となりました。日本でも法律の改正によって喫煙に対する規制が進められていますが、日本で生活する各国の外国人はどのように感じているのでしょうか?
「イギリスでは、タバコの値段が日本と比べて3~4倍くらい高い印象です。パッケージも地味なものにしなければいけないなど規制が進んでいるので、昔に比べて喫煙者は減っていると思います。ただ「健康に気を付けて」というよりも、規制が厳しいために吸うのを控えているという印象です。日本もこれから様々な規制が設けられていくのだと思います」(喫煙者のイギリス人男性)
日本で販売されているタバコには載せられていませんが、海外の多くの国では喫煙が体に及ぼす影響について、写真付きで注意喚起することが義務付けられています。そのような規制と比べると、日本の規制はまだ始まったばかりと感じるようです。
「日本では歩きながらタバコを吸っている人を時々見かけます。飲食店は規制できても、そのような人たちがいるとまだまだ受動喫煙や、すれ違うときに煙や火が当たってしまうトラブルはあると思うので、すべての人が安全に暮らせるような制度があればいいなと思います」(非喫煙者のイタリア人女性)
非喫煙者の外国人からは、受動喫煙やタバコの火によるやけどの危険性についても心配の声がありました。
海外では自分の周囲にタバコの煙が近づいてくると手で払う人も多くみられます。日本ではあからさまにそれを表現する人は少ないかもしれませんが、受動喫煙に対する懸念の声は日本でもこれから高まっていくことでしょう。
ルールを守って、お互い気持ちよく
日本で始まった飲食店での原則禁煙に対する外国人の意見を紹介しました。
今回インタビューに応じてくださった外国人の方々の声としては全体的に好意的で、規制に反対するような意見は聞かれませんでした。多くの外国人は、飲食店での原則禁煙は通過点であり、さらに規制が進むと感じているようです。
現在日本では、法律の改正など喫煙に対する規制が変化している時期です。日本へ旅行に訪れる際には、事前によく調べて法律の変化にも注意しましょう。観光地の多くの飲食店では、注意喚起を多言語で表記しているお店も増えていますので、しっかり喫煙に関するルールを守りましょう。
<取材&執筆>
株式会社ダリコーポレーション
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