近年は観光だけでなく、日本が気に入って長期滞在する外国人も増えています。長期滞在の理由は学校で日本語を学んだり、日本での仕事を始めたりとさまざまですが、日本に住む外国人は日本に対してどんなイメージを持っているのでしょうか。また、どんな時に自分が日本人に似てきたと感じるのでしょうか。
今回は日本に住むイギリス人女性に日本のイメージと自分が日本人みたいだなと思った瞬間を聞いてみました。(各コメントは回答者の個人的な意見です)
海外から見た日本人のイメージって?
島国である日本は、他とは違った特徴を持つ国という印象を持たれることが多いようです。海外から見た日本に対するイメージとしてよく耳にするのは、「マナーが良い」「礼儀正しい」という言葉かもしれません。海外でさまざまなスポーツに挑戦する日本人が増えていますが、そのパフォーマンスとして真っ先に注目されるのが「おじぎ」です。
サッカーでゴールを決めた後のパフォーマンスや野球でホームランを打ってベンチに帰った時に日本人選手がおじぎする姿は今や海外でも有名です。おじぎすることの意味が海外でどのように捉えられているのかは定かではありませんが、やはり印象としては「礼儀正しい」と感じられているようです。
また、スポーツ観戦の後に日本人が一斉にスタジアムを清掃することも海外で大きく取り上げられ、他の国のサポーターもそれを真似するということが報道されたこともありました。やはり、日本人のマナーの良さは特別なものとして感じられることが多いようです。
日本人はやっぱり礼儀正しい?
では、実際に日本に住んで生活しているイギリス人女性は日本人の礼儀正しさについてどのように感じているのでしょうか?
「日本人が独特だなと思うのは、電車で高齢の人や、小さな子供連れの人にすぐに席を譲っていることです。中には、2人組の人が並んで座れないからと、自らが別の座席に移動して座っていた席を譲っている人もいて、どうしてそこまでするのか、なかなか理解できませんでした。他人への思いやりやマナーは、素晴らしいと思います」
日本人からすると日常の光景に映るかもしれませんが、電車での席の譲り合いは外国人から見ると、日本人のマナーの良さを表していると感じるようです。
相手の側に立って気持ちを考え、行動する日本人の感覚は海外からはとても好意的に受け入れられているようです。
一方で、その日本人の繊細さは別の意味でも特有のものに感じられるようです。
日本人って、よく謝るよね?
海外から礼儀正しく、マナーが良いという好印象を持たれている日本人ですが、それが行き過ぎると不可解なものにも感じられるようです。
「日本人のイメージは、閉鎖的で内向的な感じがします。心を開くまでに時間がかかるというか、スローというか。文化の違いかもしれませんね」
日本人に比べて自分の意見をはっきりと述べる傾向が強い外国人から見ると、日本人は「内向的」「閉鎖的」にも見えるようです。
他の人の目や意見を気にする傾向は、日本人が思わず発する言葉にも表れています。
「日本人って、“ありがとう”よりも“すみません”をよく使いますよね。前の電車の話に戻りますが、席を譲ってもらった時も“すみません”という人が多いですよね。私が席を譲ってもらったとしたらまず“ありがとう”と言います。感謝の気持ちよりも、申し訳ない気持ちが先に言葉に出るのは、日本人の性格なのでしょうね」(イギリス人女性)
礼儀正しいことは良いことですが、「すみません」という謝罪の言葉を連発する日本人はやはり独特に感じられるようです。日本人自身にとっては、「すみません」=「感謝」の意味を含んでいる場合もありますので、やはり感覚の違いと言えるでしょう。
日本人は働きすぎ?
礼儀正しいとともに、日本人のイメージで常に上位にランクインするのが、「勤勉さ」でしょう。海外から見た日本人は勤勉さを通り越して、「働きすぎ」のイメージもあるようです。
「先ほどと同じ電車の話ですと、電車で寝ている人が多いですね。スリを気にしないのか、豪快に寝ている人もいますよね。」(イギリス人女性)
マナーが良いはずの日本で、電車で寝ている人が多いのは、やはり働きすぎが原因なのでしょうか?海外ではスリの危険が高いために、電車で熟睡する人は少ないようです。
自分が日本人みたいだと思った瞬間
日本人は「礼儀正しい」「マナーが良い」「働きすぎ」など、外国人からさまざまな印象を持たれていることが分かりました。
では、日本に住む外国人は自分が日本人に似てきたと感じる瞬間はあるのでしょうか?
「あまり多くはありませんが、私は比較的手先が器用で細かい作業をするのが好きなので、日本人の箸を使ったり、折り紙などの小さな芸術品を作ったりできる器用さと、少し似ているかもしれません」
個人差はあるかもしれませんが、箸を上手に使うなど手先の器用さに日本人らしさを感じることもあるようです。
それ以外にも、意外なところで日本人らしさを感じる瞬間があるようです。
「居酒屋で正座をしている時に、日本人みたいだなと思いました。座ってご飯を食べるなんて、イギリスではないですからね」
「あとは電車から降りる時にすみません、っていうのは日本に来てから身に付きました。たまにイギリスに帰っている時にも思わず日本語で『スミマセン」って言っちゃう時があるんですよね。口から勝手に出てきてしまう言葉ですね(笑)」
母国に帰っても思わず日本語で謝ってしまうなど、本当に日本人のようですね。謝罪しているわけでなくても頭を下げる日本人の習慣にも同じく影響を受けているようです。
「ついつい会釈してしまう時日本人みたいだなって思います。知ってる人とすれ違った時や、レジでお釣りを受け取る時などに、少し頭を下げて挨拶するのは日本人特有ですよね」
日本に住んでいる外国人も会釈する機会が増えると、自然に身に付いていくようです。日本人の場合には会釈は反射的に行っているような感覚もありますから、海外から来た方たちもだんだんとそれと同じ感覚を身に付けているのかもしれせん。
インタビューの回答から、長く日本に住んでいると考え方や感じ方まで影響を受けるようです。また、正座をして食事をするなど母国とは全く違う習慣でも違和感なく行えるように順応していくようです。
まさに「郷に入っては郷に従え」という日本のことわざ通りに日本を満喫しているようです。
お互いの違いを尊重できる環境に
今回インタビューしたのは、イギリスから日本に来られた方でしたが、毎年日本には各国から大勢の外国人が訪問しています。海外から来た方たちは日本の景色や食事はもちろんのこと、日本独自の文化や習慣にも興味を持ち、影響を受けていることが分かりました。
お互いの文化や考え方の違いを尊重し合うことができれば、世界各国から日本に来た方たちにも日本滞在を楽しんでもらえるはずです。どの国から来た方にも日本に来て良かったと思ってもらえるように、お互いの違いを尊重できる環境を実現していきたいものですね。
<筆者プロフィール>
塚原 和久(つかはら かずひさ)
旅行、社会インフラなど身近なものから、企業人事など硬めのジャンルまで幅広く担当するライター。苔、観賞魚など自然をこよなく愛し、妻との旅行を楽しむ日々。
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