日本人が日常的に目にする食べものには、一見同じように見えるのに、違う名前がついているものがたくさんあります。例えば「唐揚げ」と「竜田揚げ」の違いや、「からし」と「マスタード」の違い。その差を明確に説明できる人って、意外と少ないのでは?
そんな“○○と△△の違い”について、過去に公開した記事の中から「食材編」「調味料編」「お酒編」「スイーツ編」「パン編」をまとめて紹介します。
【食材編】「和牛」と「国産牛」の違い
続いては食材編。都内の人気飲食店で活躍するH崎シェフに教えてもらいました。
スーパーの精肉コーナーや精肉店で牛肉を買うとき、パッケージに「和牛」や「国産牛」と書かれているのを目にします。どちらも同じ日本産の牛肉……つまり「和牛」=「国産牛」なのでは?と思いきや、そうではないようです。
「和牛は、日本の在来種を改良してつくった、黒毛和種、褐色和種、日本短角種、無角和種の4種類と、この4種類の交雑種の牛のことだけを言います。いっぽうの国産牛は、外国産の牛でも、日本で肥育された期間が最も長く、日本国内で食肉用に加工されたものであれば名乗ることができます」
つまり「和牛」とは品種のことを指し、産地は関係ないのだとか。たまに「黒牛」や「黒毛牛」といった表記を見かけることもありますが、「黒毛和牛」や「黒毛和種」のように「和」の字が入っていないものは「和牛」ではないそうなので、要チェックですね。
【調味料編】「バター」と「マーガリン」、「ファットスプレッド」の違い
トーストやパンケーキに塗ったり、料理やスイーツをつくる過程で使ったり、何かと身近な「バター」と「マーガリン」。同じような調味料として、最近では「ファットスプレッド」という名前もよく目にするようになりました。なんとなく味に差がありそうな気はしますが、その違いはどこにあるのでしょうか? 続いても都内の人気飲食店で活躍するH崎シェフに教えてもらいました。
「簡単に説明すると、バターは動物性の油脂を使用した乳加工品。マーガリンとファットスプレッドは、多くが植物性の油脂を使用した加工品です。つまり、乳脂肪を使っているか、その他の油脂を使っているかに違いがあります」
動物性の乳脂肪が80%以上含まれるものが「バター」。一方で「マーガリン」に80%以上含まれるのは、乳脂肪以外の油脂。主に大豆油や、コーン油、菜種油、パーム油といった植物性の油脂が使われているそうです。
含まれている油脂が80%未満であれば「ファットスプレッド」に分類され、果実やチョコレートなどの味をつけることが許されているのだとか。確かに、チョコレートクリームやピーナッツクリームの原材料で「ファットスプレッド」の表記を見かけることが多い気がします。
「バターは乳脂肪を含んでいるぶん、香りや風味が強くてコクがありますね。マーガリンはバターよりもさっぱりとした味わいです。カロリーでいうと、ファットスプレッドが一番低いんですよ」
【日本の定番料理編】「唐揚げ」と「竜田揚げ」の違い
唐揚げと竜田揚げ、どちらも衣をつけて揚げられた料理というイメージですが、その違いはいったいどこにあるのでしょうか? 武蔵野栄養専門学校で講師をしている、管理栄養士の杉崎くに子さんに教えてもらいました。
「からあげ(唐揚げ、空揚げ)は下味をつけた食材に衣をまぶして揚げたものの総称です。筑前煮や肉じゃがなどを総称して煮物というのと同じ。調理方法は、下味をつけた肉や魚介類、野菜などの食材に衣(片栗粉や小麦粉)をつけて揚げるか、衣に色々な調味料を入れて下味をつけて食材を揚げるかの2パターンに分類されます」中国から伝わったので漢字で書くと「唐揚げ」とも言い、ニンニクを使っているのが基本なんだそう。
一方「竜田揚げ」は、奈良県の生駒地方に流れる、紅葉で有名な竜田川にちなんでつけられた名称。「肉や魚などに下味をつけ、衣(主に片栗粉)には下味をつけないで揚げるという調理方法。揚げたときに衣の厚い部分は白く、薄い部分は赤褐色に見えることで、川面に紅葉が映える風情を盛り込んだ料理」なんだとか。
「からあげの作り方の1パターンと同じなので、竜田揚げはからあげの仲間でもありますね。日本発祥の竜田揚げはニンニクをほとんど使わず、下味は醤油とみりんが基本になります」
【お酒編】「ウイスキー」と「ブランデー」の違い
どちらも同じ琥珀色で、見た目には違いがわかりにくい「ウイスキー」と「ブランデー」。オーセンティックなBARで、落ち着いてグラスを傾けるお酒というイメージも同様ですが、その差っていったい何なのでしょう? 東京都心でBARを経営する、三度の飯よりお酒好きのBAR店主・Kさんに聞いてみました。
「ウイスキーもブランデーも同じく蒸留酒ですが、原料が違うんです。ウイスキーに使われるのは、大麦・ライ麦・トウモロコシなどの穀物。ブランデーには、ぶどう・リンゴ・サクランボなどの果実が使われています。ブランデーの語源は、オランダ語で“焼いたワイン”を意味する“ブランデヴァイン”。輸送中に酸っぱくなってしまった白ぶどうのワインを蒸留したところ、おいしい!と評判になったのが起源といわれています」
似たようなものに「スコッチ」や「バーボン」もありますが、どちらも「ウイスキー」に含まれるそう。
「スコッチ」は大麦麦芽などの穀物を原料、定められた方法をもとに、スコットランドで造られるお酒。
「バーボン」は、原料にトウモロコシを51%以上含んでいるお酒。原料や製法、産地によって呼び方が変わるようです。
「たしかに見た目は同じですが、飲んでみるとその差は歴然。飲み方にも違いがでてきます。ウイスキーは、ストレート、オン・ザ・ロックス、ハーフロック、水割り、ハイボールなど様々な飲み方で楽しめるお酒。ブランデーは製造過程で香味が濃縮されていることもあり、ストレートのまま飲むのが基本で、室温で飲むのがオススメされています」
【スイーツ編】「クレープ」と「ガレット」の違い
薄い生地と具材を合わせて食べるという意味では、一見同じもののように見える「クレープ」と「ガレット」。「クレープ」は手に持って、「ガレット」はお皿にのせて食べる点に差がありそうな印象ですが、実のところ、その違いはどこにあるのでしょうか? 数々のメディアや飲食店でのメニュー監修やレシピ開発等で活躍する、料理家・フードスタイリストの池ももこさんに聞いてみました。
「クレープはフランス生まれのスイーツの一種。日本ではたっぷりのホイップクリームやフルーツなどを巻いてハンディータイプで食べることが多いですが、フランスのクレープはもっとシンプル。砂糖やジャムをトッピングして、ナイフとフォークを使って食べることが一般的です。
また、ガレットはフランス・ブルターニュ地方生まれの郷土料理の一種。“まるく薄いもの”を意味し、ガレットブルトンヌと呼ばれることもあるそう。クレープと同様に、生地の上にトッピングを添えて、ナイフとフォークを使っていただきます」
日本の「クレープ」と本場フランスの「クレープ」にも違いがあったようです。どちらもフランス発の食べものであるという「クレープ」と「ガレット」には、生地の原材料に大きな違いがあるそう。
「クレープの生地は、小麦粉・卵・バター・牛乳・砂糖で作られることが一般的。その一方でガレット生地の原材料は、そば粉・塩・水。そもそもなぜガレットにそば粉が使われているのかというと、その起源は中世にまで遡ります。
ガレットの発祥地であるブルターニュ地方は、小麦の栽培に向いた土地ではありませんでした。その当時、そばの栽培が小麦と異なり無税で広く推奨されていたこともあり、庶民にとって育てやすい作物だったのだとか。また、小麦よりも短いターンで収穫できるため重宝され、小麦粉に代わる主食として人々の食生活を支えてきたと言われています」
主食として発展してきた「ガレット」は、原材料がそば粉ということもあり、葉物野菜にハムやチーズなどをトッピングした食事メニューとして親しまれることも多いそう。一方で小麦粉ベースで配合的にも生地がやや甘めの「クレープ」は、トッピングには砂糖やジャムが好まれることが多い様子。「クレープ」と「ガレット」には、デザートか主食かの違いもあるようです。
「日本でもアイスやフルーツ、カスタード、チョコレートなどをトッピングするので、クレープ=デザートという位置づけになっている人も多いのでは? ただ、厳密に分けられるわけではないので、好みやその時の気分に合わせて、色々なアレンジを楽しんでみるのもオススメですよ」
【パン編】「クロワッサン」と「バターロール」の違い
相性抜群のバターを使用したパンの代表格といえば、「クロワッサン」と「バターロール」。こちらは見た目にも違いがありますが、その差を明確に説明するとなると、意外と難しいのでは? その大きな違いは、作り方にあるようです。JPCA認定パンコーディネーターの資格を持ち、SNSでは様々なパン屋さんのパンを紹介している遠山はるなさんに聞いてみました。
「クロワッサンはフランス語で“三日月”という意味があります。生地にバターを何層も練りこんでいるので、サクサクした食感が特長的ですが、もともとは三日月の形だけで、バターもたっぷりでなければサクサクでもなかったといわれています」
ちなみにフランスでは、バターを使った「クロワッサン」は菱形、マーガリンを使ったものは三日月型にすることで区別して、販売しているお店も多いそうです。
「一方のバターロールは、ロールパンにバターを巻き込んで作られます。クロワッサンとの違いは、バターを何層にも練りこんでいるか、巻き込んでいるかに違いがあります」
層になっているためサクサクするぶん、表面がぽろぽろと崩れやすい「クロワッサン」に比べて、バターが巻き込まれている「ロールパン」は表面もべとつかず、ふっくらとした食感で食べやすいのも特徴です。バターの風味や食感で好みが分かれそうですね。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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