普段なにげなく目にしている食べものには、一見同じように見えるのに、違う名前がついているものがたくさんあります。たとえば「唐揚げ」と「竜田揚げ」の違いや、「からし」と「マスタード」の違い。その差を明確に説明できる人って、意外と少ないのでは?
そんな“○○と△△の違い”について、これまで「日本の定番料理編」や「食材編」、「調味料編」をお届けしてきましたが、今回は「お酒」をテーマに調査! 東京都心でBARを経営する、三度の飯よりお酒好きのBAR店主・Kさんにお話を聞いてみました。
■「日本酒」と「焼酎」の違い
日本酒と焼酎は、どちらも日本を代表するお酒として海外でも人気が高く、日本全国に多くの蔵元が存在しています。その違いはどこにあるのでしょうか?
「まず違うのは製法による区別の仕方。日本酒は“醸造酒”、焼酎は“蒸留酒”という分類に分けられます。醸造酒とは、穀物や果実を酵母によってアルコール発酵させて造ったお酒のことを言います。醸造酒をさらに蒸留してできるのが蒸留酒。つまり、造り方に違いがあるんですね」
BARでよく目にする代表的なお酒のなかでは、ビールやワインなどが醸造酒。ウイスキーやブランデー、ウォッカやジンなどが、蒸留酒なんだそうです。
「原料にも違いがあります。日本酒の原料になるのは、酒米と言われる酒造用のお米。代表的な酒米の“山田錦”という名前なら、聞いたことがある人も多いのでは? 一方で焼酎は、米や麦などの穀類、芋類などのデンプンをアルコール発酵に使用しています」
また、アルコール度数にも、日本酒はおよそ15℃前後、焼酎はおよそ25℃前後と差があります。日本酒を飲む際に一緒に飲む水を「和らぎ水」と言いますが、日本酒も焼酎もストレートで飲む際は、和らぎ水やチェイサーとともに楽しむと、二日酔い対策に良いそうですよ。
■「シャンパン」と「スパークリングワイン」の違い
BARでは誕生日などお祝い事がある際に開けられることの多い、「シャンパン」や「スパークリングワイン」。シュワシュワのワインに対して、何となくどちらの名前も使いがちですが、その違いはどこにあるのでしょうか?
「スパークリングワインは、発泡性ワインの総称です。なので、シャンパンもスパークリングワインのひとつに含まれます。シャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインのなかで、なおかつ、フランスのワインの法律で規定されている条件を満たしたものだけが名乗れる称号です」
つまるところ、シュワシュワの発泡性ワインに対しては、すべて「スパークリングワイン」という名前を使っておけば間違いなさそうです。スパークリングワインの製法には、瓶内で発酵させるシャンパーニュ方式、密閉耐圧タンクで発酵させるシャルマ方式、ワインに二酸化炭素を加える方式の3つがあるそう。フランス以外の国でも造られています。
原則としてフランスのシャンパーニュ地方で造られる「シャンパン」は、もちろん製法もシャンパーニュ方式。原料となるぶどうの品種はピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネだけが認められていて、他にも数多くの条件や品質審査に合格しなければなりません。「シャンパン」に特別感があるのも頷けますね。
■「ウイスキー」と「ブランデー」の違い
どちらも同じ琥珀色で、見た目には違いがわかりにくい「ウイスキー」と「ブランデー」。オーセンティックなBARで、落ち着いてグラスを傾けるお酒というイメージも同様ですが、その差っていったい何なのでしょう?
「ウイスキーもブランデーも同じく蒸留酒ですが、原料が違うんです。ウイスキーに使われるのは、大麦・ライ麦・トウモロコシなどの穀物。ブランデーには、ぶどう・リンゴ・サクランボなどの果実が使われています。ブランデーの語源は、オランダ語で“焼いたワイン”を意味する“ブランデヴァイン”。輸送中に酸っぱくなってしまった白ぶどうのワインを蒸留したところ、おいしい!と評判になったのが起源と言われています」
似たようなものに「スコッチ」や「バーボン」もありますが、どちらも「ウイスキー」に含まれるそう。
「スコッチ」は大麦麦芽などの穀物を原料、定められた方法をもとに、スコットランドで造られるお酒。
「バーボン」は、原料にトウモロコシを51%以上含んでいるお酒。原料や製法、産地によって呼び方が変わるようです。
「たしかに見た目は同じですが、飲んでみるとその差は歴然。飲み方にも違いがでてきます。ウイスキーは、ストレート、オン・ザ・ロックス、ハーフロック、水割り、ハイボールなど様々な飲み方で楽しめるお酒。ブランデーは製造過程で香味が濃縮されていることもあり、ストレートのまま飲むのが基本で、室温で飲むのがオススメされています」
■「ジン」と「ウォッカ」の違い
カクテルの材料に使われるお酒としてよく目にする「ジン」と「ウォッカ」。「ラム」や「テキーラ」とともに、世界の四大スピリッツ(蒸留酒)と称されるお酒です。
トニックウォーターと混ぜて作られる「ジントニック」や「ウォッカトニック」、レモンかライムを絞りジンジャーエールで割った「ジンバック」や「ウォッカバック」など、同じレシピで違うお酒を使うカクテルが多く存在しますが、そのお酒じたいの違いは意外と知らない人が多いのでは?
「ジンはイギリス発祥。大麦、じゃがいも、ライ麦などを原料として造られます。最大の特徴は、ジンの名前の由来ともなっているジュニパーベリー(ネズの実)や、薬草成分を加えて造られること。
口の中で独特の香りが広がります。ロシア発祥のウォッカも原料はジンと同じですが、蒸留した原酒を白樺の炭でろ過させている点に違いがあります。ジンなどに比べると、まろやかでクセがないので、オレンジジュースなど味の濃い割物と合わせるカクテルにも向いています」
ちなみに、四大スピリッツの仲間である「ラム」は、西インド諸島が原産地とされている、サトウキビの蜜や絞り汁を原料として作られる蒸留酒で、甘さが特徴です。
「テキーラ」はメキシコ発祥で、原料には竜舌蘭(アガベ)という、サボテンやアロエに似た植物が使われているそう。原料や製法の違いによって、香りや味わいに大きな違いが出てくるようです。
編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。
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