日本の街中でたくさんの中国人を見かけるようになりました。観光客や留学生だけでなく、日本企業で働く中国人も増えてきているようです。
中国人が文化や習慣の異なる日本で生活をするのは苦労が多いでしょう。それも異国で働くとなると、さらなるカルチャーショックを受けるはず。
そこで今回は、日本に来て2年経つという中国人女性に話を聞かせてもらいました。日本で中国語を教える仕事に就いている彼女も、日本で面接を受けた際には驚くことの連続だったそうですよ。
(以下は、インタビューに応じてくださった個人の意見です)
日本人は面接で自分らしさを出さないの?同じような色のスーツばかり……
日本で就職面接を受けるときには、濃紺やグレー、黒系など落ち着いた色のスーツを着るのが一般的。特に就職活動中の学生は、一様に「リクルートスーツ」と呼ばれるスタイルに身を包んで面接に臨みます。
「日本では面接に行くときに、女性でもスーツを着るんですね。そんなこと知らなくて、最初に面接を受けたときには普段着で行ってしまいました。面接官は、きっと驚いたでしょうね(笑)」
業界によって違いますが、面接官に「信用できる人」と思われるコーディネートをしていくのが日本では割と当たり前という認識ですよね。ビジネスにふさわしい服装をして行かないと、常識がないと判断されかねません。日本の面接では内面だけでなく外見も厳しくチェックされるのです。
「日本では、面接を受けるときに薄く化粧をしなければならないことも知りました。中国では、特に30代を過ぎると化粧をする人はあまりいません。私もほとんどスッピンで働いていました。だから、化粧をしなくてはいけないと知って焦りました(笑)。中国では、面接のときに服装や化粧といった外見を気にすることは滅多にないですからね」
そんなこと聞く必要ある?子供を産む予定なんて自分でも分からないのに!
「日本の面接で私が既婚者であることを伝えたら、『子供は欲しいですか?』『いつごろ子供を産む予定ですか?』って聞かれたんです。そのときは結婚してすぐだったし、子供を産むかどうかなんて自分でも考えたこともなかったし、答えられませんでした。それよりも、そんなプライベートなこと聞くなんてよくないですよ!中国ではあり得ません」
中国では履歴書に配偶者や子供の有無を記入する欄はあるものの、子供を産む予定があるかどうかといったプライベートに踏み込むような質問はしないとのこと。日本でもこういった質問をするのは望ましくないとされていますが、実際には「すぐに辞めてしまわないか」ということを懸念して面接で聞かれる機会は少なくないようです。
中国ではもともと共働き夫婦が多く、結婚や出産で仕事を辞める女性が少ないというのも日本と異なる点かもしれませんね。
日本の面接は提出する書類が多過ぎる!同じことを何回も聞かないで……
最近では、応募時にweb履歴書を送って書類選考を受けるのが一般的となっています。その後の面接では、履歴書と職務経歴書を持参するようにいわれることもあるようですが……。
「面接を受ける前に履歴書を既に送っているにもかかわらず、面接当日にも『プリントしたものを持ってきてください』と言われたの。そのうえ、面接場所に行ったら『これに記入してください』って同じような書類をまた出してきたのよ!同じ内容を3回も書くなんて信じられない(笑)」
たしかに、一度の提出で済むものをくり返し書くのは効率が悪いと感じてしまいますよね。さらに面接でも同じような経験をしたそうです。
「面接でも同じような質問が多いの。たとえば『日本で働くのに必要なビザを持っていますか?』なんていう質問を、面接のたびに聞かれました。私が話したことは覚えてないの?って思ってショックでしたよ(笑) 中国では同じ質問をするのは失礼だと考えるけど、日本人は気にならないのかな」
なんて親切なの!交通費を払ってくれるって感動!!
「中国で面接を受けたときに、交通費を払ってくれるところなんてありませんでした。面接を受けただけでお金をもらえるなんて考えもしません。日本では、交通費を払ってくれるところがあるんですね!これには、とても感動しました」
就職活動をしていると、交通費は想像以上にかかるものです。すべての企業ではありませんが、日本では交通費を全額、もしくは一部を支給してくれるところもあるので助かりますよね。ただし、日本でも基本的には交通費は自己負担であると考えておいたほうがいいでしょう。
日程がはっきりしないから、面接を受けるためのスケジュール調整が大変!
「日本では、面接を受けるまでにメールのやり取りを何度もしなくてはいけないのが面倒ですね。中国では、応募したらすぐに面接の日が決まることが多いんですよ」
受ける側からしたら、面接の日程はすぐに決めてほしいところ。しかし、応募者が殺到すると面接のスケジュールを組むのに時間を要することもあるのでしょう。
「それから、中国では面接後何日以内に結果を連絡するのか期限をきちんと教えてくれます。3日以内に連絡をくれるところがほとんどで、遅くても1週間以内には結果が分かります。ところが日本の企業は、いつ結果が分かるのかはっきりと教えてくれない所もあって困りました。合否の連絡を待っている間は、他の選考を進めるべきか悩むこともありました」
日本でも採用の意思が強い場合には3日ほどで連絡をくれることが多いですが、応募者が多いなどの理由から選考に手間取ると1週間以上連絡がこないケースもあるようです。応募者からすると、面接の結果はできるだけ早く欲しいですよね。
とっても不思議!日本の就職では経験者は有利ではないの?
「私が受けた語学教室のなかに、講師としての経験を問わないところがあったの。中国人であれば留学生でもだれでもいいそうで……。滅多にないケースだと思うけど、真面目な印象の強い日本の企業にもこういったところがあるのはショックが大きかったです。それから、経験者と未経験者の時給が同じというところもあって驚きました。日本は経験者を優遇しないのかな?」
中途採用では即戦力を求めるはずですが、人手不足が深刻な業界では経験や職歴などを問わない企業が増えてきているのかもしれません。また、以前に比べ転職に対するネガティブな印象は薄れつつありますが、それでも業界によっては転職回数が多いと不利になることもあると思われます。
「中国では転職を複数回していても、問題になることはあまりありません。経験があれば、それだけ優秀であると考えられがち。日本では、転職しているかどうかを気にするようですね。転職が多いほどマイナスなイメージがあるみたいだから、履歴書に正直に書きたくなくなっちゃう(笑)」
意外!日本のほうが時給が安いことがあるなんて…
「私は中国語講師の面接しか受けていないから一概に言えないけれど、この職に関していうと中国のほうが時給は高いような印象があります。日本のほうが物価は高いのにどうしてなのか不思議でたまりません」
「中国の賃金は日本よりも低い」と思い込んでいる人も多いのでは?しかし、職種や地域によっては手当やボーナスを含むと日本よりも中国のほうが収入が高い場合があると彼女はいいます。
日本では当たり前のように浸透している一般的な面接方式が、中国人にとっては驚きの連続のようです。国によって企業が求める人材は異なりますから、それを見極めるための面接スタイルが違うのは当然かもしれません。とはいえ、こういった面接ひとつをとりあげても日本と中国でこんなにも違いがあるのは興味深いですよね。
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