多くの人を魅了する飲み物「コーヒー」。ブラジルやコロンビア、インドネシアなど、赤道周辺の「コーヒーベルト」と呼ばれる地域で生産されたコーヒー豆は世界中へ輸出され、国によってさまざまな飲み方で楽しまれています。
今回は、世界で愛される9種類のコーヒーメニューを筆者が自宅で作ってみました!ちなみに筆者もコーヒー党。ブラックコーヒーを1日2〜3杯、たまに疲れているときや目を覚ましたいときはエスプレッソダブルにタップリの砂糖を入れて飲んだりします。また、ライターとしてこれまでにさまざまなコーヒーショップを取材してきました。自分好みの豆や淹れ方を研究したり、専門店を飲み歩いたりもしますが、コーヒーメニューについて考えたのは今回が初めて。
シアトル発 ちょっとブラックなコーヒーの教科書 単行本(ソフトカバー) 1598円
そこで、人気ブログ 「I Love Coffee」を運営するシアトル在住のコーヒー愛好家、岩田リョウコさんの著書「シアトル発 ちょっとブラックなコーヒーの教科書」に載っている情報や、独自に調べた情報を頼りにレシピを再現しました。おそらく本場の作り方と若干違うものもあると思いますが、あしからず!
オーストラリア:(卵黄が入ったプリンのような後味「カイザーメレンゲ」
まず最初は、オーストラリアの「カイザーメレンゲ」。オーストリアでハプスブルク家の皇帝(カイザー)、フランツ・ヨーゼフが好んだ飲み方なのだそう。材料は、ブラックコーヒー、牛乳、ハチミツ、そしてなんと卵黄を使います。
作り方は簡単。まずは鍋に全ての材料を入れます。コーヒーの中に卵黄をポトリ…不思議な気分。
そして、ホイッパーで混ぜながら弱火にかけ、卵黄が固まってしまわないように沸騰する前に火を止めて完成です。
気になる味は…お、なかなかいけます!卵黄の効果で味がまろやかになり、ほんのりとろみも感じます。ハチミツと牛乳で苦味も抑えられるので、コーヒーが苦手な人でも楽しめそう。飲み終えてから口の中に残る卵黄と牛乳の風味は、まるでプリンのような後味です。
さすが、王家の皇帝が愛しただけあって、なんだかリッチな味わいでした。しかし、日頃ブラック派の筆者にはややパンチに欠ける印象。筆者やショウガやシナモンを追加してみたくなりました。
メキシコ:シナモンを効かせた華やかな香り「カフェ・デ・オージャ」
続いては、メキシコの「カフェ・デ・オージャ」。直訳すると「鍋のコーヒー」という意味なのだそう。鍋にブラックコーヒーとシナモンスティック、そして、ピロンシージョというメキシコの黒糖を入れて煮て作ります。今回は普通に日本で手に入る黒糖を使いました。
しばらくすると、鍋の中からシナモンと黒糖とコーヒーの混ざり合った香りが立ち込めます。華やかで甘くてほろ苦い、なんとも言えないまさに“異国の香り”。
飲んでみると、優しいアロマのような香りが鼻から抜け、なんだか癒されます。もっとスパイシーになるかと予想していましたが、鍋で煮立たせているせいか、味はとてもまとまりのある印象。黒糖のコクのある甘さもいいです!カフェラテにシナモンパウダーをトッピングする人は日本でも多いと思いますが、ブラックコーヒーにシナモンというマッチングは未体験の味わいでした。華やかで大人な香りは、ワインが好きな人の味覚に合うかも。
アイルランド:コーヒー&ウイスキー&生クリームの見事なマリアージュ「アイリッシュコーヒー」
お次は、アルコール大国、アイルランドで親しまれる「アイリッシュコーヒー」。材料は、ブラックコーヒーにアイリッシュウイスキー、生クリーム、砂糖と、さすがコーヒーもアルコールカクテルとして楽しみます。
まず最初に、生クリームをホイッパーでゆるめに泡立てておきます。
あとはブラックコーヒーに砂糖とウイスキーを入れ、よく混ぜてから、上から生クリームをフロートして完成です。
コーヒーとクリームが二層に分かれたビールのような見た目はなかなかフォトジェニック。スプーンで少し混ぜていただきます。
これはとっても美味しいです!コーヒーの苦味とウイスキーの芳醇な香りは予想を裏切らない好相性。さらに砂糖の甘さとホイップしたクリームも混ざり合い、コーヒーのような、お酒のような、デザートのような。スポンジにコーヒーやラム酒を染み込ませて作るスイーツ、ティラミスにも似た味わいでした。今回作ったメニューの中で、最も料理としての完成度が高いと感じた一杯です。
香港:コーヒーとミルクティーのハイブリットな共演「ユンヨン」
続いては、香港の「鴛鴦(ユンヨン)」。濃い目に淹れた紅茶にエバミルクを加えた「香港式ミルクティー」とブラックコーヒーと砂糖を合わせた飲み物です。今回は、ティーバッグで淹れた紅茶とコーヒー、そしてコンデンスミルクを混ぜるという方法で作ってみました。
カップを口元に近づけると紅茶の優雅な香りが鼻を通り抜け、飲んでみるとコーヒーの苦味とミルキーな甘さを感じるという不思議な感覚。コーヒーもミルクティーもどちらも馴染みのある味ですが、合わせてみると「そうきたか」と感じる、なんとも意外性のあるハイブリット味わいでした。自宅で作るなら、コーヒーも紅茶も濃いめ、コンデンスミルクもたっぷり入れるのがオススメです。
フィンランド:コーヒーとチーズのシンプルな組み合わせが絶品!「カフェオスト」
続いては、世界屈指のコーヒー大国、北欧フィンランドで親しまれるという「カフェオスト」。ブラックコーヒーを一日に4〜5杯も飲むというフィンランドの人が愛するメニューは、ブラックコーヒーにブロックのチーズを入れただけというシンプルなもの。
今回チーズはデンマーク産の「マリボー」という種類を使ってみました。日本でも広く普及し、私たちが「チーズといえばこんな味」と想像するような、スタンダードなチーズです。
スプーンでチーズとコーヒーを一緒にすくって口に運ぶと、まずはコーヒーの苦味を感じ、その後でチーズを食べると、いうまでもなくチーズの味を感じますが……はっきり言って一緒にする意味がわからない。うーん、なぜこれをコーヒー大国フィンランドの人が好んで……と疑問を抱きながら二口目を食べようとスプーンを持ち上げると……
チーズがとろけ始めてる!そして口に入れると、先ほどとは違ってコーヒーとチーズが舌の上で見事なマリアージュ。乳脂肪分のミルキーな味わいでコーヒーの苦味を和らぎ、チーズの塩気が後を引きます。とてもシンプルで意外な組み合わせが、ここまで奥深い味わいになるとは…。カフェオストを自宅で楽しむなら、フレッシュチーズよりも、乳脂肪分が高くて塩味も強めのチーズが合うと思います!
スペイン:マックスコーヒー好きに試してほしい!「カフェボンボン」
続いては、ヨーロッパの中でもコーヒー消費量の多い国、スペインの「カフェボンボン」。スペインでコーヒーといえば、イタリアと同様、ドリップしたブラックコーヒではなく、マシーンで抽出したエスプレッソが主流。カフェボンボンは、エスプレッソにコンデンスミルクを入れたドリンクです。
自宅ではエスプレッソが作れないので、ドトールのエスプレッソをテイクアウトして、そこに森永のコンデンスミルクを投入してみました。
エスプレッソの濃厚な苦味に負けないように、たっぷりとコンデンスミルクを入れます。
これはかなり濃厚な苦味と甘味!イタリア人はエスプレッソに大量の砂糖を入れて、デザートのように楽しむそうですが、そのコンデンスミルクバージョンですね。今回はテイクアウトして少し時間が経ってから作ったので、エスプレッソのクレマ(上の泡)がなくなってしまいましたが、できたてのエスプレッソで作ったらもっと口当たりは優しくなって美味しいでしょう。味わいは、“かなり甘い”でお馴染みの缶コーヒー「マックスコーヒー」に苦味を与えた感じといってもいいかもしれません。このままシロップとしてかき氷にかけても美味しそう!って、ちょっと主旨から外れてきますが……。
モロッコ:スパイスの香りで覚醒効果絶大。「カフェ・デ・ゼピス」
お次は、モロッコの「カフェ・デ・ゼピス」です。スパイスをふんだんに使ったエスニック色豊かな料理で知られるこの国。「カフェ・デ・ゼピス」には、ゴマやブラックペッパー、ナツメグといったスパイスが入ります。
ブラックコーヒーにスパイスを入れるのではなく、コーヒー豆とスパイスを一緒に挽いて、ハンドドリップで抽出するという本場に近いやり方で作ってみました。この作業工程だけでもワクワクしますが、コーヒーミルにスパイスの匂いが映ってしまったらどうしよう……と恐れて、特に香りの強いナツメグだけ後からドリップするときに追加することにしました。
挽いた豆にお湯を落としていくと、強烈なスパイスの香りが立ち込めます!
見た目は普通のブラックコーヒーですが、パンチの効いた香りがたまりません!しかし料理のようにダイレクトに香辛料が入っているわけではなく、フィルターを通しているので口に含むと意外にも飲みやすいです。この覚醒しそうな香りは眠気覚ましとしてオススメ。お好みのスパイスをお好みの配合で入れれば、自家製のオリジナル「カフェ・デ・ゼピス」が完成します!
日本:名古屋発。和スイーツの食材でほっこり美味しい「あんこ入りコーヒー」
残る2つは、日本のコーヒーメニューです。まずは、あんこ入りコーヒー。その名の通り、ブラックコーヒーにあんこを入れたドリンクです。名古屋方面で愛されるコーヒーの楽しみ方として、名古屋発のコーヒーチェーン店「コメダ珈琲店」のメニューにもラインナップされています。
筆者は今回初めて試しましたが、一口目からなんの違和感もなく美味しいです!あんこは砂糖よりも優しい甘さで、さっぱりといただけます。そして、各国の味を試してから、あんこの味を感じた時の安心感たるや……日本人としてのDNAが喜ぶ味わいでした。
日本:オリジナルレシピを実験!「八丁味噌入りコーヒー」
そして最後は、名古屋発の「あんこ入りコーヒー」からインスパイアを受けて試してみました。「八丁味噌入りコーヒー」!以前、味噌とコーヒーを使ったシフォンケーキを食べたことがあるのを思い出し、もしかすると合うのでは?ということで、実験です。作り方はとっても簡単。ブラックコーヒーに少量の八丁味噌を入れるだけです。
味噌を溶かしてみると、茶褐色の濁った液体が完成。いわば「コーヒーミソスープ」ですね。
一口飲んでみると、八丁味噌の酸味が口の中で主張し、しょっぱくて酸っぱくて苦い……残念ながら、美味しくはありませんでした!味噌汁も出汁が入らないと美味しくないので、それに変わる何かが必要かも。例えば、カフェオレにまろやかな信州味噌なら合うかも?…今回はやめておきましょう。
いかがだったでしょうか?日本ではコーヒー業界でサードウェーブが流行し、豆の産地やコーヒー本来の味わいが着目される中、筆者もシンプルな飲み方でコーヒーを楽しんでいましたが、今回の企画では各国のオリジナルメニューから、コーヒーの新しい魅力を知ることができました。こんなにもさまざまな食材と相性が良い飲み物だったとは……その懐の広さに驚かされました。
ちなみに、筆者が一番好きだったのはフィンランドのカフェオスト。あなたも気になったメニューを自宅で試してみてはいかがでしょうか。きっと異国の食文化を感じることができるはずです。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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