多種多様な野生動物が生息する北海道では、市街地でも野生動物に出合えるチャンスがあります。また、北海道と本州の間には、ブラキストン線と呼ばれる動植物の分布を区分する境界線があるため、北海道固有の野生動物が見られるという魅力もあります。今回は、北海道に生息する野生動物を10種ご紹介します。
1)エゾリス:伸びた耳毛がチャームポイント
キタリスの亜種で、北海道固有種です。体長は20〜25センチメートルほどです。冬眠をしないため、厳しい冬を生き抜くために、秋になると冬毛に生え変わります。尻尾の毛がふさふさになり、耳先の毛も長く伸びるのが特徴です。
秋になるとクルミやドングリなどの木の実を地面のあちこちに埋めて、冬の準備を始めます。一部の木の実はそのまま忘れられ、そこから新しい芽が出てくることもしばしば。森づくりにも貢献しているエゾリスは、森の管理人と呼ばれることもあります。活動時間帯は季節によって異なり、冬から春にかけては朝、夏は日中、秋は昼間に活動します。
北海道全域に生息しており、札幌近郊では円山公園などの森林で見ることができます。浦臼町の浦臼神社は、春になるとカタクリとエゾリスのロマンチックなコラボレーションが見られることで有名です。
2)ナキウサギ:手のひらサイズのウサギ
ネズミのような見た目をしていますが、ウサギ目ナキウサギ科に属するウサギの仲間です。大きさは10〜20センチメートルほど。1万年以上前の氷河期にシベリア大陸から北海道に渡り、氷河が解けたあとも涼しい山岳地帯で生き延びたといわれています。
ナキウサギは冬眠をしないため、夏の終わりごろから冬に備えて干し草の貯蔵を始めます。運が良ければ昼間に岩の上でひなたぼっこをしている姿が見られることもありますが、行動が活発になるのは主に早朝となります。かなり警戒心が強く、俊敏に動くため、簡単には出合えません。
暑さに弱く、日本での生息地は北海道のみ。ただし、北海道でも限られたエリアでしか見ることができず、大雪山系、日高山脈など標高800メートルを超える高山帯の岩場に多く生息しています。
3)シマエナガ:まるで雪の妖精のような愛らしさ
シマエナガは、日本では北海道でのみ見られる、エナガの亜種です。全長は14センチメートルほどで、その半分を尾が占めます。冬になると羽が白くなり、寒さに耐えるために羽毛の中に空気をたくさん含ませて丸くなります。その姿がSNSで話題になり、「雪の妖精」の愛称で親しまれるようになりました。
シマエナガに出合いやすい季節は冬です。警戒心が強く、俊敏に動き回るので見つけづらいですが、札幌都心部では円山公園や藻岩山などの山が近い場所で目撃されています。
4)キタキツネ:北国を象徴する動物
北海道で最も出合える確率が高い野生動物が、キタキツネです。本州に生息しているホンドギツネよりも大きく、あごから腹部にかけての白い毛、耳の裏と足首の黒い毛が特徴です。冬になると、ふんわりした冬毛となり、かわいらしさが増します。平地から高地まで幅広い範囲に生息しており、山林や住宅地などあちこちで遭遇できます。
キタキツネは体内に「エキノコックス」という寄生虫を持っています。この寄生虫が人の体内に入ると、死に至る感染症を引き起こします。発症までの期間がとても長く、10年後に症状が現れることも。人慣れしており、自分から近づいてくるキタキツネもいますが、決して触らないようにしましょう。また、エサやりも厳禁です。
5)タンチョウ:雪原に立つ優雅な野鳥
アイヌ語では「サルルンカムイ(湿原の神)」と呼ばれるタンチョウは、翼を広げると、2.4メートルほどになる日本最大級の野鳥です。日本では北海道でしか見られません。かつては北海道全域に分布していましたが、乱獲や生息地域の減少などで個体数が激減してしまい、現在は国の特別天然記念物に指定されています。頭頂の目を引く赤い部分は羽毛ではなく皮膚です。
本来、タンチョウは渡り鳥ですが、北海道では留鳥で一年中見ることができます。主な生息地は釧路湿原や、霧多布湿原などの道東の湿原です。釧路の鶴居村にはタンチョウの給餌場があり、冬には200羽以上のタンチョウが集まります。
6)エゾシカ:自然の中を群れで過ごす身近な動物
北海道でよく出合える野生動物で、北海道にのみ生息しているニホンジカの亜種です。体長は1.5メートルから1.9メートルほどで、ニホンジカの中では最も大きい種類です。雄は縄張り争いをするため、武器となる角を持っており、この角は毎年生え変わります。角は毎年4〜5月ごろに自然と抜け落ち、繁殖期を迎える秋までには新しい角が完成します。
知床半島や野付半島などの道東に生息しています。近年では数が増え、山が近いところであれば、札幌近郊でも出没することが増えました。エゾシカは、特に車や電車との接触事故が絶えない動物です。飛び出しには注意しましょう。
7)オジロワシ:流氷とともに訪れる渡り鳥
オジロワシは、尾が白い大型のワシです。開発や森林伐採で、生息地域や個体数が減り、1970年に国の天然記念物に指定されました。渡り鳥で、夏はユーラシア大陸北部に生息し、冬になると流氷とともに北海道に飛来します。ただし、知床や野付半島には留鳥となっている個体が生息しており、一年を通して観察することができます。
オジロワシを観察するなら、冬の知床がおすすめです。日本最大級のワシであるオオワシも知床で越冬するため、オオワシとオジロワシを一度に目にすることができます。オジロワシとオオワシは羽の色で見分けられます。体が薄いグレーや茶色で、尾だけが白いのがオジロワシ。オジロワシより白い部分が多く、色が白と黒にはっきり分かれているのがオオワシです。
8)エゾモモンガ:くりくりとした大きな瞳が特徴
タイリクモモンガの亜種で、北海道固有種のエゾモモンガ。木に巣穴を作り、一生のほとんどを木の上で過ごします。空を飛ぶための飛膜を持っており、滑空距離は最大で50メートルを超えることも!
生息地は北海道全域で、札幌市内の公園や林にも生息しています。札幌市内では、円山公園や野幌森林公園で見られます。夜行性で警戒心が強い生き物ですが、2〜3月は繁殖期で活発に動くため、見られるチャンスがあるかも。観察するなら明け方や夕方がねらい目です。
9)エゾフクロウ:音で捉える夜のハンター
エゾフクロウは、日本全体に生息しているウラルフクロウの亜種です。ウラルフクロウは北に生息するものほど羽の色が白く、南にいるものほど濃い褐色をしており、エゾフクロウは全体的に白っぽい羽色が特徴です。
夜目がよくきき、暗闇でも獲物を捕らえることができます。また、わずかな音も捉えられるように、左右の耳の位置が少しずれています。このずれによって音の方向や距離を知ることができ、獲物がいる場所を正確に捉えることができます。夜行性で昼間は眠っています。日中に林をよく探してみると、木の窪みで眠っているエゾフクロウが見られるかもしれません。
森林があるところであれば札幌近郊にも生息しており、円山公園や野幌森林公園などの公園でも目撃されています。
10)シマフクロウ:北海道の守り神
翼を広げると約1.8メートルにもなる世界最大級のフクロウです。アイヌ語で「コタンコロカムイ(村の守り神)」と呼ばれ、守り神として崇拝されてきました。多くのフクロウは、獲物となる小動物に気付かれないように羽音を立てずに飛びますが、シマフクロウは魚を主食としているため、羽音が聞こえる珍しいフクロウです。
現在、野生のシマフクロウは160羽ほどといわれており、国の天然記念物に指定されています。日本では北海道にのみ生息しており、知床半島や根室半島などで見ることができます。知床の羅臼町にある宿泊施設「鷲の宿」には、シマフクロウのための給餌場があり、シマフクロウを間近で観察することができます。
野生動物と出合った時の注意点
野生動物と出合えたら、思わず触ってみたくなるでしょう。しかし、野生動物には決して触ってはいけません。野生動物が驚いて攻撃してくる可能性があるほか、野生動物が持つ特有の病気に感染する恐れもあります。エサを与えることもNGです。人の食べ物の味を覚えて人里に下りてきてしまい、生態系を壊す原因になるほか、人の生活に害を及ぼす危険もあります。
このほか北海道では、ドライブ中の野生動物との衝突事故もしばしば起きています。特にエゾシカ、キツネなどは、道路端から急に飛び出してきたり、道路の真ん中に立っていたりすることも。野生動物と出合えたら、周囲の安全確認をしっかりした上で、刺激をしないよう静かに観察しましょうね。
Text by:みんなのことば舎
※本記事の情報は2021年4月時点のものです。
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