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温泉の専門家に聞く!ムダにしない「効果的な入浴法」と意外と知らない温泉マナー

温泉の専門家に聞く!ムダにしない「効果的な入浴法」と意外と知らない温泉マナー

更新日: 2020/12/26

古来より神話や開湯伝説に登場し、日本各地に数多く存在する“温泉”。ヨーロッパでは医療行為の一環としての位置づけが多いそうですが、日本ではさらに、景観や静けさを楽しみ心を癒す場所として、老若男女さまざまな人々から愛され続けています。

単なる入浴にとどまらないのが日本の温泉文化。いったいどのように楽しむのが素敵なのでしょうか? 専門家に聞いてみました!

教えてくれたのは、温泉ビューティ研究家の石井宏子さん。温泉のキレイと健康を探求し、旅に出かけて宿に泊まることをライフワークとしている、温泉と旅のスペシャリストです。

四季折々のにおいや音を感じることが日本人は大好き。静かにゆったり過ごすことで、今まで気づかなかったことを思い出せる。そういうことができる、残された数少ない場が温泉。せっかく日本で温泉に入るのであれば、日本ならではの楽しみ方をしてほしい」という石井さん。さっそく日本の温泉の楽しみ方についてご紹介していきます。

■そもそも「日本の温泉」って何だろう?

■そもそも「日本の温泉」って何だろう?

ヨーロッパの温泉は男女一緒に水着で入るのがスタンダード。いっぽう日本の温泉は、男湯も女湯も混浴もみんな裸で入ります。そして、温泉につかる前にはシャワーなどで体をきれいにするのが通例ですが……。

「これには、自分の浮世の汚れを落として身を清めてから、地球がくれた恵みである温泉に入って心身をリセットするという、日本の仏教や民族的な考え方がひとつあります。ただ単に、体が汚れていると汚いからシャワーで落としてから入るというエチケットの意味だけではないんです」

日本の文化に根付いた意味合いがあるのも、日本の温泉の面白さ。そういうちょっとした「なぜこうするのか?」、という部分に注目して文化を感じるのも、楽しみ方のひとつです。

■基本的な温泉の入り方

■基本的な温泉の入り方

日本の温泉の基本的な入り方は、メニューにすると次の4つになります。

(1)入る前にまず水分補給をしましょう
(2)シャワーで体をきれいに洗いましょう
(3)「かけ湯」をしましょう
(4)タオルをつけないようにして湯に入りましょう

日本の温泉は、日本人が一番気持ちよく感じる39℃~42℃くらいの高温になっているところが多いです。そういう高めの温度に入るとき、体が冷えていると余計に熱く感じるので「かけ湯」というものをします。

「シャワーなどで体を洗ってから、入る温泉の湯を桶ですくって体にかける。そうすることで、これから入る温泉がどのくらいの温度で、どういう成分なのかということを、自分の肌と体に教えてあげられるんです」

「かけ湯」は、心臓に遠いところから順に行います。「右足→左足→右ひざ→左ひざ→右腰→左腰→お腹→右肩→左肩→背中」で10杯。絶対に10杯かけなきゃダメ!というわけではありませんが、そのくらいたくさんかけてもOK。温度に体が慣れてくるので、熱めに感じる湯にも入りやすく、準備運動にもなるので体にもいいそうです。

シャワーで身を清めて「かけ湯」をしたら、いよいよ温泉の湯に入る段階。タオルが温泉の湯につからないようにするのは、日本人が持つ「せっかくフレッシュなものを汚してはいけない」という気持ちの現れです。では、湯殿に持ってきた小さいタオルはどこに置いておけばいいのでしょうか?

「なんとなく日本情緒を感じてみたければ、頭にのせてみるのもいいでしょう。最初に冷たいお水でしぼっておいたタオルをのせると、頭が冷えるのでのぼせないで入れるという利点もあります。うまくのせられないと思う人は、棚や別のところに置いて入ってもいいと思います」

■温泉につかったら汗ばむくらいで一度出るのがポイント

■温泉につかったら汗ばむくらいで一度出るのがポイント

温泉の湯にはその温泉ごとに色々な作用がありますが、一番のオススメの入り方は「いっぺんに長くあたたまりすぎないこと」。日本の温泉は温度が高めで成分がしっかり入っているから、ほどほどで出るのが大事なんだそう。

「『鶏の唐揚げの法則』をイメージしてみてください。鶏の唐揚げを揚げるとき、高温の油の場合、いっぺんに揚げようとしても周りだけがこげて中は生焼けになっちゃうでしょう? 人も同じで、熱いお風呂に一度に入っても、皮膚の表面の温度だけ上昇して、自分ではあったまったつもりでも中は生焼け。免疫力が上がるとか健康にいいとか、美容のために血の巡りがよくなるというのは、体の深部体温が1℃あがるかどうかが重要なこと。そのためには二度揚げするんです。熱い油で揚げるときって、1回ちょっと揚げて出して、もう1回揚げると中までしっかり火が通って、周りはカリッと中はジューシーになる。温泉もそういう入り方がいいんですよ(笑)」

15分いっぺんに1回だけ温泉に入るよりも、5分ずつ3回に分けて入るほうが、体の芯からあたたまる効果が3倍くらい違うんだとか! 温泉につかる時間のめやすとしては、ちょっと汗ばむくらい。

温泉の成分、温度、その人の体質や体調によっても違うから、はっきり何分とは言えないですが、だいたい5分くらい経つとちょっと汗ばんでくるので、ざぶんと入って5分から長くても10分くらい経ったら、そろそろかなって思ってもらったらいいと思います」

温泉の施設によっては、全身浴のほかにも、足湯、手湯など部分浴を楽しむことができます。部分浴には、一部分をしっかりあたためることで全身の血の巡りをよくするという利点があります。少しでも長く入りたい場合は、そういう入り方にしてみるのもよさそうです。湯の熱さに慣れるために、足浴や手湯から始めるのもいいですね。

■疲労回復や美容にオススメの方法

■疲労回復や美容にオススメの方法

疲労回復には「温冷交互浴」がオススメです。「熱い温泉に入って、一度出たときに冷たい浴槽があればそれを利用するか、シャワーを冷ために設定して浴びる。全身に浴びるのがつらければ、足先だけとか手先だけでもOK。そしてまたあたたかい温泉に入る。そうすることで血行がより促進されて、疲労物質が早く代謝されるので、早く疲れがとれる」とのこと。これはダイエットをめざしている人にもオススメの入浴法だそうです。

また、日本の温泉は総じて肌をすべすべにする成分が多いのも特長です。温泉から出た後は肌が非常にリセットされた状態。いちばん化粧品の成分を吸収しやすいときなので、温泉から出たら脱衣場ですぐにスキンケアをするのがオススメです。できれば自分がいつも使っているものがよさそう。いつもよりグングン吸収して、よりスキンケアの効果があがるそうです。

「もし美肌の湯でフレッシュな源泉が出ている湯口がある場合は、桶にとってぜひ顔も洗ってほしいですね。顔に一滴も温泉をつけないことって結構あるけど、もったいない! 熱い場合が多いので、少し冷ますか、水で薄めて。桶でタオルをしぼって温泉蒸しタオルにするのもオススメです」

ぜひ試してみてほしいですが、循環ではないフレッシュな源泉かけ流しであることをしっかり確認してくださいね。

■マナーを守ってスマートな温泉体験を!

■マナーを守ってスマートな温泉体験を!

温泉に入るときのマナーは、自分だけではなく他の人も気持ちよく入れるかどうか、思いやりと気遣いを忘れないことが基本です。温泉に入るときは、湯のフレッシュさを大事にするために、いきなり湯舟に入らないこと、タオルは湯につけないこと、頭まで入らないことに気をつけましょう。温泉の湯を飲むのもオススメしません。温泉はプールとは違いますので、広い湯舟ではどうしても泳ぎたくなってしまいますが、そこはなんとか我慢しましょうね(笑)

また、日本の温泉はコミュニケーションの場でもあります。お風呂で目が合ったら、にこっと笑って「こんにちは」と挨拶をしてみるのもいいかもしれません。温泉から出るときは「お先に」がお決まりの挨拶です。

温泉から出た後の脱衣場もびしょびしょにせず心地よく保ちたいところです。大きいバスタオルと小さいタオルがあるのはそのためです。大きいバスタオルは脱衣場に置いておいて後で体をふくためのもの。湯殿へ持っていく小さいタオルは、脱衣場へ戻る前に背中や足をふいてから出るためのものでもあります。小さいタオルでささっと体をふいて出ていく人を見かけると、「わかっているね!」というカッコよさがありますよ。

温泉は静かなゆったりした時間を楽しむ場所なので、静けさとゆったりした時間を守りましょう。そういう環境に身をおくというのは、心を整えるためにとても大切なこと。ゆっくり静かにすることで、温泉の水の流れる音とか、鳥の音、海のそばなら波の音、草木のにおいを感じられる。自分の五感が気持ちよくなるというのが、温泉で過ごす、温泉を楽しむためにとても大事なことです」と石井さんは語ります。

昨今ではずっとスマホと一緒だったり、絶え間なく音を聞いていたりと、何もない時間、人生の余白みたいなものがなくなってきています。そういうことを取り戻せるのが温泉という場所だと思って、静かにゆったり過ごしてみてくださいね。

Written by:

地子給奈穂

地子給奈穂

編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。

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