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伝統画材の魅力を世界へ発信する「PIGMENT」で絵具作り!

伝統画材の魅力を世界へ発信する「PIGMENT」で絵具作り!

更新日: 2017/10/26

「伝統的な画材製法や色彩文化の継承」と「世界に通じる若手アーティストの育成やサポート」を目的とする「画材ラボ PIGMENT(ピグモン)」。ちなみに「ピグモン」とは、フランス語で「顔料」や「色素」を指す言葉。希少価値の高いものや一点物の良質な画材もそろう「PIGMENT」には、国内のみならず海外からのアーティストや研究者も訪れます。今回はそんな「PIGMENT」で、留学生を含む大学院生たちが見学、絵具作りを体験しました。

約1万点の奥深き画材の世界

足を踏み入れると、そこは美しい有機曲線を描くモダン空間
足を踏み入れると、そこは美しい有機曲線を描くモダン空間

店舗デザインを手がけたのは、2020年に開催される東京オリンピックのメイン会場、新国立競技場の設計を担当する世界的建築家、隅研吾氏。木材などを使った「和」のデザインを得意とする隈氏がイメージしたのは、竹の簾(すだれ)。

まず学生たちが目を奪われたのが、壁一面に陳列された色とりどりのガラス瓶。これらは一体?

みんな無意識に好みの色を探してしまうみたい
みんな無意識に好みの色を探してしまうみたい

その正体は4500色にもおよぶ顔料。主に岩絵具と呼ばれるもので、油を混ぜると油絵用の絵具に、膠(にかわ。動物の皮や骨等から抽出される接着剤)を混ぜると日本画用の絵具になるそう。天然の石を砕いていて作られた顔料は光に当てると宝石のようにキラキラ輝き、学生たちもしばし撮影に夢中。

「絵具は使ったことあるけど、原料のことは知らなかった」
「一言で『白色』と言っても実はいろんな種類があるんだ」

スマートフォンのケースや眼鏡のフレームなどあらゆるものの塗装に使われるそう
スマートフォンのケースや眼鏡のフレームなどあらゆるものの塗装に使われるそう

他にも600点以上の筆や刷毛、希少性の高い80点以上の硯、仏像やヴァイオリンなどの修復にも使われる50種類もの膠など、200平米の空間におよそ1万点以上の画材が展示されています。

中には一点物も……
中には一点物も……
初めて見る膠に興味津々
初めて見る膠に興味津々

ワークショップでアートを体験してみよう

画材ラボ PIGMENTを運営するのは、天王洲を拠点に美術品やワイン、メディアの保存・保管業から、天王洲の土地開発など幅広い領域で事業展開する寺田倉庫。美術品の修復に必要な顔料などの生産技術や作り手の減少に着目し、「美術品の修復」と「伝統画材の収集および開発」、過去と未来のアートを支えるラボとして2015年、PIGMENTが誕生しました。

ラボとして、またアートとカルチャーを発信するミュージアムとしての役割も持つPIGMENT。店内に設置されたワークスペースでは、知識豊富な画材エキスパートたちのアドバイスのもと実際に画材を試すことも可能。また、こちらで随時開催されるワークショップには、趣味で創作活動を行う一般ユーザーからプロのアーティストまで幅広い層が集まるそう。

いよいよ学生たちが絵具作りに挑戦。今回は自分の好きなモノを色で表現することに。

まずはPIGMENT所長の岩泉慧さんのお手本から
まずはPIGMENT所長の岩泉慧さんのお手本から

まず水干(すいひ)と呼ばれる粉末の絵具からベースとなる色を決め、大理石の上で水やハチミツ、違う色の絵具を加えながら調色していきます。「粒子を潰すように八の字に混ぜるのがコツです」と岩泉所長。大理石の上で作業するのは、熱で絵具が固まるのを防ぐため。青色のベースにさまざまな粉末を足しながら混ぜると、大理石の上で群青色、藍色、マリンブルーなどさまざまな「青」の世界が広がります。

さて、次は学生たちの番。

「イメージは目玉焼き!」
「私はラッキーカラーの紫でラベンダー色を作りたいな」

みんな思い思いイメージを胸に作業開始。赤は赤でもワインのような深みのある赤、黄色は黄色でも透明感のある明るい黄色――それぞれが作りたい色を目指して試行錯誤。すんなりと完成させて違う色に挑戦する学生もいれば、「色を混ぜるほどイメージから離れていっちゃう!」と苦戦する学生も。そんなときはスタッフの方がアドバイスしてくれます。

理想の色に近づいてきたかな?
理想の色に近づいてきたかな?

最後に、完成した色とそのイメージを一人ずつ発表し合いました。

できたばかりのオリジナル絵具で絵葉書風のイラストを描く女性も
できたばかりのオリジナル絵具で絵葉書風のイラストを描く女性も

参加した学生たち14名のそれぞれの「色」がこちら。

それぞれの色にみんなの個性が詰まっています
それぞれの色にみんなの個性が詰まっています

最後に、今回の見学体験を踏まえて学生たちの感想は?

「正直、私はアートのセンスはないと思います。しかし、絵具作りで色の世界に浸りました。全く分からない領域で文化体験を通じて自分にとってさまざまな可能性があるではないですか。そう考えたら、新しい物事を挑戦する熱意を持って試せば、そこには道があるかもしれないです」(国籍:中国)

「中国の古い硯が日本の先進的な技術を組み合わせて、新しい文化を融合していることが分かった。本当に感動した」(国籍:中国)

「異国で伝統画材作りを体験することで、自国の『筆・墨・紙・硯』について新たな発見ができたのは留学生である私にとってある意味非常に有意義な体験だった」(国籍:中国)

「昔の人々はこのように自分の手で絵具を作って、後世に渡る絵を描いたということに対して、実に感心しました。絵と絵具の歴史、文化は心の中に伝わってきました」(国籍:中国)

アートと聞くと少し身構えてしまうかもしれません。「小さいころから絵が苦手で……」「美術品というと高級なイメージ……」。でも、そればかりではなく、今回の絵具作り体験のように“何かを想像し”、“実際に作る”こともひとつのアート。生み出す喜び。PIGMENTはそのきっかけを与えてくる、そんな場所です。

  • 画材ラボ PIGMENT
    画材ラボ PIGMENT
    • 住所 140-0002 東京都品川区東品川2-5-5 TERRADA Harbor Oneビル 1F
    • 最寄駅 天王洲アイル 駅 (りんかい線 / 東京モノレール羽田線)
      徒歩3分
    • 電話 03-5781-9550
  • LIVE JAPANは、beyond2020プログラム認証事業です。
    LIVE JAPANは、beyond2020プログラム認証事業です。
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