HOME [MOVIE] 映画「キル・ビル」の殺陣師/「剱伎衆かむゐ」創設者・島口哲朗氏
[MOVIE] 映画「キル・ビル」の殺陣師/「剱伎衆かむゐ」創設者・島口哲朗氏

[MOVIE] 映画「キル・ビル」の殺陣師/「剱伎衆かむゐ」創設者・島口哲朗氏

公開日: 2020/02/07

埼玉県生まれの島口哲朗氏は、日本の伝統芸能の一つである歌舞伎からプロ表現の世界に入った。その後、形式美・芝居・武術を融合させた独自のパフォーマンスを確立し、サムライソードアーティストとなり、クエンティン・タランティーノ監督の映画「キル・ビル vol.1」の剣術シーンでは、殺陣指導や振付を担当、自身も出演した経歴を持つ。

現在47歳の島口氏。日本映画や演劇の華である殺陣を現代の新たな舞台芸術へと昇華させ、1998年に「剱伎衆かむゐ」を創設。今日の日本文化において異彩を放つ人物のひとりだ。島口氏は、長年の探求の末たどり着いたサムライメソッド「剣伎道」を2012年より東京・中板橋にある道場を中心に教えている。情熱的で親しみやすい氏の指導は、日本人はもちろん外国人からも注目を集め、日本文化・芸術としての「SAMURAI」を世界に発信し続けている。

映画「キル・ビル」で培ったもの

映画「キル・ビル」で培ったもの

島口氏が自身の人生で特に忘れられない経験は、映画「キル・ビルvol.1」に参加したことだという。2003年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督による本作は、映画界に深い爪跡を残し、中でもその戦闘シーンは近年もアメリカの映画情報サイト「Collider」で「21世紀最高傑作」と絶賛されているほどだ。
「『キル・ビル』というキーワードは、国際的に通用するパスポートみたいなものですね。私は映画『キル・ビル』の殺陣の振付師であり、キャストの一人でもあります。これほど世界中の人たちにわかりやすい自己紹介はないでしょう」と島口氏は語る。彼はロサンゼルスで行われた殺陣指導から北京での撮影まで、映画制作の大半に携わっている。キャストとしては、クレイジー88の構成員として戦闘で真っ先に殺されるMIKI役として出演。ユマ・サーマン演じるベアトリクス・キドーとの一騎打ちで、刀で串刺しにされ、池に放り込まれるシーンを記憶にある人も多いのではないだろうか。

「ハリウッドスターたちと半年過ごした中で私が学んだこと。それは……そうですね、どう言えばいいかな。ハリウッドには『私は俳優だ!』と虚勢を張る人ももちろんたくさんいました。しかしその一方で、本物のスターたちはとにかく常に自然体なんです」と島口氏。特に、サミュエル・L・ジャクソンやルーシー・リュウといったスターたちが、島口氏に常に敬意を持って接してくれたことに深く感銘を受けたという。「実に誠実な人たちで、彼らとは今でも良き友人関係にあります。当時私は32歳で、新たな世界に飛び込むには、決して若い年齢ではありませんでした。クエンティン・タランティーノの知り合いが私に着目してくれたのがすべてのきっかけです。ある意味アメリカン・ドリームですよね」と島口氏は続けた。

剣を通じたコミュニケーション「剱伎道」

剣を通じたコミュニケーション「剱伎道」

島口氏がハリウッドでの好評価をつかんだ背景には、以下のような経歴がある。
1998年にサムライソードアーティスト「剱伎衆かむゐ」を結成。彼と4人の中心メンバーから構成されるこのグループは日本国内のみならず、世界各国でパフォーマンスを行っている。彼らの主な活動指針は、形式美・芝居・武術を融合させた独自のショーを通して、サムライの文化と精神を世界に広めることだ。
さらに、2012年には、20年の探求の末にオリジナルメソッド「剱伎道」を創設。
武道(マーシャルアーツ)と舞台芸術(パフォーミングアーツ)を融合したこの「剱伎道」はコミュニケーションに重きを置いており、実践者は日本文化で重要な“間合い”を会得することができるのだ。

島口氏は、「コミュニケーションは最重要なものとして、常にこだわっています。自分の目で相手の気持ちを“見る”ことはできませんよね。しかし剣を見ることはできます。自分がどのように剣を握っているか、振っているか、つまりフォームは目で見ることができる。しかし最も重要なのは距離と感情、そしてタイミングといった目には見えないものである、と私は生徒たちに教え、実践しています」と説明してくれた。

また、氏は、「サムライとは、いわゆる戦う者・武士としての存在を超越したものであるという。芸術やエンタテインメント、そして教育・教養を伝えた文化人であった」と唱える。
そして、「日本が創り出すポップでキャッチーな唯一無二の文化の根幹には、他人に対する思いやりや気配り、配慮といった目に見えないものが込められている」のだという。
「サムライこそがこうした精神の伝道師であったと、私は考えています。私のパフォーマンスに熱狂してくれるだけでなく、『自分もサムライのようになりたい』と思ってもらえたらうれしいですね」と島口氏は続けた。

東京にある剱伎道の道場では、英語による外国人向けのサムライワークショップも定期開催している。主なプログラムは剣術的な精神性を高める鍛錬、パフォーマンス体験だが、鎧など本格的なサムライの衣装での写真撮影などのオプションも用意されている。

かむゐ オフィシャルウェブサイト
http://samurai-kamui.com/

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